冨田ラボが語る「ANGEL OF THE LIGHT」
「時代と闘いながら、良質な音楽を作り出す」
今でも鮮烈に覚えているのが『SONORITE』(2005年)を発表された時の達郎さんのインタビュー記事。当時、スタジオで主流になりつつあったハードディスクレコーダー、Pro Toolsのスペックがまだ低かったことから、制作が思うように進まなかったことを吐露されていたんです。当時のバージョンは、たしかにあまり音が良くなかった(笑)。
録音中にフリーズしてしまうなんてこともありましたから。しかし、決して後ろは振り向かず、最新の機材と格闘している達郎さんの姿勢から、すごく勇気をいただいた記憶があります。Pro Toolsもバージョンアップを繰り返し、新作では達郎さんの思い描く音像に近づいたのではないかと感じました。「ANGEL OF THE LIGHT」はスイートなバラードで、すごくパーソナルな印象。一人多重録音された部分が多いのではないかと想像しました。
また、英語で歌われているため、日本語の意味に引っ張られず、言葉をサウンドの一部として聴くこともできて。とはいえ、達郎さんの一番のシグネチャーは声だと思うので、ストリングスのような役目も担うコーラスが入り、曲の真ん中にあの声がある限り「いい曲だなぁ」と受け入れてしまうんですけどね。
「ANGEL OF THE LIGHT」に紐づけるとしたら、切ないバラードの「FUTARI」もいいですが。うーん……(熟考)。個人的にはとてもスイートな印象が残ったので、「あまく危険な香り」がいいかな。僕は学生時代、ほぼ洋楽しか聴かなかったんですが、テレビCMで流れていた「RIDE ON TIME」に衝撃を受け、達郎さんの曲をはじめ、邦楽も聴くキッカケになりました。
1982年1月『FOR YOU』発表後、4月にリリースされたのが「あまく危険な香り」。あれだけ濃厚なアルバムを出した後に、ドラマの主題歌になるような、アルバムの曲に負けない素晴らしい曲が矢継ぎ早に出てきたことに驚かされましたね。それから同じくミディアムテンポのスイートな曲なら、「夏への扉」も僕にはたまりません。