tofubeatsが語る「LOVE'S ON FIRE」
「日本語のポップスであり、DJでかけても踊れる抜け感が秀逸」
ミュージシャン的なパワーもサービス精神もあるのに、ポスプロみたいな作業もできて音もすごくいいみたいな、五角形のグラフの全部が大きいような人を、僕らみたいなそんじょそこらのリスナーが褒めるものでもないんですけど、達郎さんは怖すぎる存在ですね。
「LOVE'S ON FIRE」は、達郎さんだし生バンドを想定して聴いたら、いきなりシンセから始まって、打ち込みテイストの強い作品でめちゃくちゃびっくりしました。ハードなシンセから、サビではすごく優しいコーラスを聴かせる、そのバランスの妙が楽しいですね。硬質な四つ打ちですが、80sっぽいユーロビート感もある。生バンドをやっている人の打ち込みという感覚があって、自分がやったらこうはならないだろうというところも面白かったです。
詞に関しても、ポップスにするためにラブソングの枠を借りているような、歌詞まで込みの抜け感を意識しているのがすごいなと。ポップスに大事な軽さを体現するためにいろいろな技術を使って、単なる軽薄な軽さでなく、カーボンのような硬い軽さに行き着いている、数少ない作り手だと思います。
「LOVE'S ON FIRE」もそうですが、達郎さんの曲にはダンスミュージックっぽいアプローチもあって、DJでも流される日本語の曲を作っている第1世代の一人ですよね。僕がDJでかけていた曲で一番好きなのは「メリー・ゴー・ラウンド」。ベースにすごく意識が行っていて、完全にそれでグルーヴが出来上がっているのに、日本語のポップスであるというのがやばくて、DJの時にはベースの音だけデカくしたりしていました。
J-POPって展開で音楽を作っていくものだと思うんですけど、達郎さんの曲はそれがリニアというか、歌もののポップスであるにもかかわらず、楽曲としての持っていき方がカッコよくておしゃれだなと感じます。いわゆるシンガーソングライター的な方向に転んでしまわないというのは、結構意識をしないと無理だろうし、今の時代からは生まれにくいというところも含めて、特別な存在です。