澤部渡が語る「コンポジション」
「点を打つようなリズムと抑えた声の調和が、胸を打ちます」
山下達郎さんのソロアルバムを意識的に聴くようになったのは、実は最近のこと。もちろん10代の頃から自然と耳にしていましたが、サブカルとかアングラとか、カウンター的な音楽を志向する自分からすると、洗練された楽曲たちはどこか遠いもののように感じていたんです。
出会い直すきっかけの一つになったのが、2010年代前半頃、あるファンの方が、『CIRCUS TOWN』から『FOR YOU』までを収録したアナログのボックスセットをくださったこと。ある時急に「これは僕よりも澤部さんが持っている方がいい」と(笑)。そこで、音の良さに感動したり、「いつか(SOMEDAY)」という曲の素晴らしさに気づいたり、ほかの盤を遡って『ARTISAN』に衝撃を受けたりして、勝手に達郎さんの核のようなものを見出しました。前作『RAY OF HOPE』からはリアルタイムで追いかけています。
そんな中で聴いたのが「コンポジション」。グッと抑えたボーカルがすごく魅力的ですね。過去の楽曲では、「PAPER DOLL」も抑えた声が印象的でしたが、この曲ではより甘さが感じられます。達郎さんが曲に取り入れる打ち込みって、さまざまなパターンがあると思うんですけど、この曲ではブラックコンテンポラリー的なエッセンスが感じられて、そこにも惹かれましたね。点を打つようなリズムがとても美しくて、それがボーカルとフィットしているところにグッときました。
そしてアルバム全体で見ると、構成もかっこいい!甘くて切実な「コンポジション」のような曲の次に、ガンとコードが波を帯びている「YOU(ユー)」が来るのは、シンプルに気分がアガります。
山下達郎さんというアーティストは、僕にとってはまぶしすぎて直視できない存在だったのですが、いろんな音楽を聴いて僕自身が成長したからなのか、ちょっとだけ目が慣れてきたのか(笑)、年々その懐深さやすごみが明瞭に見えるようになっていきます。今は、達郎さんの楽曲を追いかけるのが楽しくてたまりません!
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