Reiが語る「RECIPE(レシピ)」
「歌詞とサウンドが密接に紐づいた、五感で味わう芳醇な楽曲」
達郎さんの音楽は五感が刺激される気がします。ただ耳だけで楽しむのではなく、香りや味があったり、人肌を感じたり。「RECIPE (レシピ)」も主題歌となったドラマにちなんで、歌詞に料理のモチーフがたくさん出てきますが、比喩表現が天才的です。
また数ヵ所入っているブレイクには、ぐつぐつしているお湯の中にパスタを放り込んだり、煮込んでいた鍋のフタを開ける瞬間をイメージしました。調理する中での重要なタイミングを音楽に落とし込んでいる気がして、テーマとサウンドの紐づけ方が巧妙です。
立体感もすごい。全部の音に必然性があるし、整理されていてクリアに聞こえます。特にシンセサイザーとグロッケンの使い方、コーラスワークは達郎さんのシグネチャーと言えます。
達郎さんらしさといえば、カッティングギターも入っていますね。リズムギターに適した強めのテンションで弦を張っていて、余計なものが全くないプレーは、大人になればなるほど粋に感じるようになりました。でも私はリードギターを弾く達郎さんも大好きなんです。
弦楽器なのに息つぎをしていたり、端々でしゃくり上げるニュアンスに歌心を感じます。「ヘロン」にはギターインスト・バージョンもあって。そもそもメロディが良い曲を、何本ものギターでダビングしているアレンジが最高。自分のアルバムにもインストを必ず入れようと思ったきっかけの曲です。
そもそも私の達郎さんの音楽の入口は「ずっと一緒さ」なんですが、この時もほかの音楽にはない五感に響くものを受け取ったんだと思います。音が鳴っているのに、なぜか夜の冷えた風を浴びているような静けさや沈黙を感じる。リバーブのかけ方やミックスに、この温度感を作る確かな方程式があるんでしょうね。
声も曲によって万華鏡みたいに使い分けていますが「RECIPE(レシピ)」はとっても優しい。ソフトに歌うためには肺活量がむしろ必要です。達郎さんの器の大きさと体力のすごさを感じました。