「サッカーは戦争だ」とはよく耳にするフレーズである。
実際、サッカーの試合が戦争の引き金になった例はある。1969年に勃発したエルサルバドルとホンジュラスの戦争だ。メキシコW杯予選での直接対戦が、両国が抱えていた対立感情を煽り、戦争に突入した。
しかし歴史上、サッカーが実際の戦争に結びついたのは、この一度だけ。サポーター同士がやり合うことはあっても、それが国交断絶や戦争に発展した例はない。
そう考えると、サッカー=戦争はかなりオーバーな表現。耳にするたび「サッカーは戦争ではない」と言いたい衝動に駆られる。むしろ地球の平和にこれほど貢献しているモノはないとさえ言いたくなる。
サッカーには、人々の国際交流を促進させる特別な力がある。4年に1度のW杯を現地で観戦してみたいと思っている日本人は、どれほどいるか。予選のアウェー戦に出かけたいと思っているファンも、相当な数に上るだろう。代表チームの応援に限った話ではない。アウェー観戦の欲求は、今シーズンのACLに出場しているガンバ大阪、鹿島アントラーズ、浦和レッズ、それぞれのサポーターも強く抱えている。
日本人は、海外サッカーの現場にも大挙して押し寄せている。海外組が出場する試合だけではない。チャンピオンズリーグのビッグマッチが行われる現場はもとより、話題にも上らないマイナーな試合現場でも、日本人の姿を目の当たりにする。旅行代理店の担当者は言う、その数はメジャーリーグ観戦者の比ではないと。
このことは外国人にも当てはまり、世界中のサッカーファンは地球上を旅して回っている。時に彼らは訪問先で問題行動を起こす。アウェーの地で狼藉を働く輩が現れる。現場には、戦争に譬えたくなる殺気が漲ることもある。
しかし圧倒的に多いのはそうではない場合だ。名所旧跡を観光し、地元の料理に舌鼓を打ち、地元民やその文化と触れ合いながら旅行を満喫するファンこそが、多数派だ。彼らは結果的に、親善大使の役割を果たすことになる。サッカーは地球の平和に貢献していると言いたくなるゆえんだ。
別の言い方をすれば、サッカーには地球を救う潜在能力がある。FIFA加盟国が国連加盟国を上回る事実にも、壮大なパワーを見ることができる。地球の津々浦々まで浸透しているサッカーが、今とても眩しい存在に見える。
サッカーはいわば、地球最大のNGO団体だ。地球最大の企業であり、地球最大の政府ともいえる。好むと好まざるとにかかわらず、責任のある立場に身を置いていて、啓蒙活動をしやすい状況にある。欧州各国で行われている試合をお茶の間観戦できる国は日本だけではない。
インターネットの普及のおかげで、ファンは低料金で、世界のサッカー情報を入手できる。ネットの動画で試合を観戦することも可能だ。世界各地で行われているサッカーと、そのすべてを同じようにカバーするネット社会との相性は抜群にいい。ネットを通して、クラブの名前や選手の知名度は上がり、身近な存在になる。
それがマラドーナ、プラティニ、ジーコといった超有名選手とそれ以外との差が大きかったかつてとの違いだ。長年大きな大会で活躍を続ける選手でなくても、世界的に知られた存在になりやすいのだ。
中田英寿はそんな現代を代表する選手かもしれない。彼が欧州で活躍したのは、決して長い時間ではない。ベンチを温めている時間も短くなかった。それにもかかわらず「ナカタ」は世界的に有名だ。
チャンピオンズリーグで見せ場を作った中村俊輔、UEFA杯で優勝した経験のある小野伸二らの名も知られている。世界的な知名度では、マリナーズのイチローより上かもしれない。小さな国を旅していて「オノ」の名前を不意に聞かされると、サッカーというスポーツの偉大さを、改めて感じる。
メディアは、プレーはもとより、ピッチの外の話題も積極的に拾うので、いい行いをすれば、そのまま自分の宣伝につながる。欧州で活躍するアフリカ出身者やブラジルの貧民街の出身選手が、地元の恵まれない子供たちのために慈善事業を行えば、それがメディアで伝えられイメージアップになる。
そしてそれが将来のビジネスの源にもなるのだ。現役を退き、母国に帰った時、スポーツ選手を尊ぶ風土に支えられ、彼らは名士として温かく迎えられる。
貧困の中で育ち、欧州で名声を高めた選手は無数にいる。サッカー界は、歴史的にそうした格差社会と共存しながら発展してきた。貧困の中から誕生したスターは、現役を退けば地元に戻り、稼いだお金を還元しようとする。
ジーコがリオデジャネイロに設立したサッカースクールは、ビジネスにもつながっている。この循環システムは見事というほかない。地球上に存在する格差が、サッカー発展のエネルギーの源になっているように見える。格差が社会貢献しやすい環境を生み、それが新たなビジネスチャンスを生むわけだ。
UEFAは、人種差別に反対するスローガンを全面に掲げている。スタンドのファンが肌の色の違う選手に差別的な声を浴びせかければ、そのチームにはUEFAから何らかの制裁が科せられる。白人主義のクラブとして知られるラツィオ(イタリア)やレアル・マドリード(スペイン)などは、早速その対象になっている。
サッカーのマーケットは、なんといっても地球全体だ。「サッカー株式会社」という世界最大のグローバル企業には、地球にとっていいことをストレートに商売にしやすい特徴がある。
人種差別反対を謳えば謳うほど、イメージはアップし、スポンサーからの支持も得やすくなる。FIFAが次回のW杯開催国に南アフリカを選んだ理由もそこにある。かつて人種差別政策を敷いていた国でW杯の開催を成功させれば、FIFAの株はさらに上がる。それこそ国連顔負けのステイタスを得られる。
サッカーは、否応なく地球に貢献しなければならない存在なのだ。地球が発展しなければ、サッカーも発展しない。地球を守ることは、サッカーを守ることでもあるのだ。
€250,000
ローマの「王子様」こと、トッティのちょっと笑える天然ボケっぷりを紹介した本をなんとトッティ自身が監修。この自虐ともいえる本がイタリアで空前の大ベストセラーに。
トッティには、印税250,000ユーロ(約¥4,000万)が発生したが、王子様はなんと、これを全額ユニセフに寄付。その善行はイタリア中から喝采を浴びた。
£50
イギリスのクラブチーム、レディングがサポーター専用の棺桶を発売。ブルー×白のチームカラーに彩られ、エンブレムとスタジアム、サッカーボールのモチーフも付けられたこちらのお値段が500ポンド(約¥100,000)。
このうち50ポンドは、恵まれない子供たちのために寄付される。余談だが、ブルー×白の骨壺も同時発売された。
1goal = €4,000
6月7日からスイスとオーストリアで開催される欧州サッカー界の最大のイベント、欧州選手権(ユーロ2008)では、1ゴールあたり4,000ユーロが国際赤十字に寄付されることになっている。
目的は、アフガニスタンでの地雷による犠牲者の支援活動。前回のユーロ2004のゴール数77で試算してみると、約¥5,000万の寄付となる。
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インド洋大津波で奇跡的に命が助かったインドネシアの少年。彼がポルトガル代表ルイ・コスタのユニフォームを着ている姿がテレビ放映されたことから、ポルトガル協会が寄付を募集。
その総額約5万ポンドを持って、同代表のクリスティアーノ・ロナウドがインドネシアを2週間にわたって訪問。インドネシア中で大歓迎を受けた。
1goal = $500
サッカーを通じた子供の教育、育成などを目的とする「フットボール・フォー・ホープ・センター」をFIFAは今後アフリカに20か所設置する予定。
その資金の一部として、2010年のW杯南アフリカ大会の予選で記録された1ゴールごとに、500ドル(約¥50,000)をFIFA公式スポンサーの6社がそれぞれ寄付することになっている。
1kg
ブラジルの地元で行われたロビーニョ主催のチャリティーマッチは、1kgの食料を寄付すると入場券と引き換えられるという仕組みで行われた。
「平和、友好、そして街の団結が僕の狙い。このスタジアムに戻ってくることは僕の喜び。そしてこうやってチャリティーを行うことができることも本当にうれしいと思っているんだ」
€4,000
マラドーナの後継者といわれるアルゼンチン代表、バルセロナ所属のリオネル・メッシ。彼の「マラドーナ2世」の呼び名を決定的にしたのが2007年スペイン国王杯準決勝ヘタフェCF戦の5人抜きゴール。
この時のスパイクがチャリティーオークションにかけられ、香港の大富豪に4,000ユーロ(約¥640,000)で落札された。
¥1,011,000
2006年末、デビッド・ベッカムをイメージキャラクターとして発売されたドコモのケータイの世界で1台の限定モデル「MOTORAZRタトゥー・ケータイ by デビッド・ベッカム」がネットオークションにかけられた。
120件の入札があったが、最終落札額は¥1,011,000。売上金は、ベッカム合意のもと、日本ユニセフ協会に寄付された。