サッカーと文学といえば、まずはノンフィクションという選択肢がある。
ヨーロッパのトップリーグから草サッカーまで、あらゆるレベルのサッカーが存在し、語るべき素材も、選手個人やチーム、ポジション、戦術など多岐にわたっており、実際、エンタメ性の高いノンフィクション作品も多く存在する。
そんなサッカーを小説(=フィクション)として読む意味がどこにあるかというと、それこそファンタジー性ではないかと思う。
過去の出来事や名プレーヤーをフィクションの中で再設定したり、あるいはギリギリの話に違うアングルから切り込んだり、素材が良質なだけに、面白い作品が生まれる可能性が大いにあるからだ。
ただ日本においては、マーケットが小さいと判断されているのか、翻訳も含め傑作に巡り会う機会が少ない。そんななか、この2冊はたとえサッカーに興味がなくとも十分に楽しめる作品だと思う。
まず『サッカーが消える日〜』は、サッカーが行われなくなった2030年の世界を描いたSFチックな作品。過去の出来事が巧みに配置されているし、「こんな未来もあるかも」と思わせるリアリティもある。
もう一冊の『俺が近所の公園で〜』は、2ちゃんねるのサッカースレッドから生まれた『電車男』的作品。
高校生の主人公が日本代表になり、ワールドカップに出るという一見荒唐無稽なストーリーだが、読後には、ある意味予想を裏切るほどのたまらない感動が待ち受けている。