蕎麦って何?
おいしくって体にいい。蕎麦にもっと親しもう。
大きく分けて、普通種、ダッタン種、野生種がある。普通種は、各地で細々と受け継がれてきた在来種と、収量を増やすためそこから育種された改良種の2通り。
ダッタン種は血液がサラサラになるというルチンを多く含む。野生種は漢方薬として重用されてきた。9~11月に収穫されたものを新蕎麦と呼ぶが、香り高く味もよく、この時期、蕎麦屋は新蕎麦を愛でる客で賑わう。
収穫後、乾燥・脱穀した蕎麦の実が「玄蕎麦」。固い実だ。一番外側の黒い鬼殻を取ったものが「丸抜き」。それを段階的に挽き、ふるいにかけていく。
挽き方、配合で味は変わる?
店によって蕎麦の色が違う、それには理由があるんです。
蕎麦の実の中心部を製粉したのを「一番粉」また「更科粉」と呼ぶ。白く上品な蕎麦粉だ。それより外の胚乳部を製粉した蕎麦粉は「二番粉」。一番粉より色合いが濃い。さらに外側の甘皮部分を製粉した蕎麦粉が「三番粉」。最も色が濃く、風味が強い。挽きぐるみは玄蕎麦を直接挽いた蕎麦のこと。
さて、これらの蕎麦粉を用い、100%で打ったものを十割、あるいは生粉打ちという。蕎麦粉8割に、つなぎ(主に小麦粉。とろろや卵の場合も)2割の割合で打ったのが二八。蕎麦粉10に対し、つなぎ2割を加えたのが外二、1割加えたのが外一と呼ばれる。一般的に、つなぎの量が多い方がつるつるするが、蕎麦の風味は薄れる。
もり、せいろ、ざるの違いは?
単純に器の違い?実は同じものだった⁉
「もり」は皿盛りの略、というのが定説。冷たい蕎麦を皿に盛り、上から冷たいつゆをかけたものだった。「せいろ」は、切れやすい生蕎麦を蒸籠で蒸し、熱盛りで供したところから、そう呼ばれるようになったもの。盛り蒸籠の略称である。「ざる」はゆでた蕎麦をざるにのせたから。海苔をのせてあるスタイルは明治以降のものだ。
手打ち、機械打ちはどう違う?
手打ちも多いが、手ごね、機械のしの店も多い。
蕎麦はデリケート。熱にも弱く、機械挽きだと風味が飛びやすい。一方、石臼手挽きなら、ゆっくり挽いていくため、熱を持たない。風味を損なわずに挽けるというわけだ。時間が経つほど、香りも失われるので、挽きたて、打ちたて、ゆでたての「三たて」が一番旨いとされる。
親子南蛮の南蛮って?
ズバリ、ネギのこと。たぬきときつねの違いは?
「南蛮」とはネギのこと。大阪・難波がネギの産地だったことから、関西では「なんば」と呼ぶ人も多い。「たぬき」は東京では揚げ玉をのせたものをいうが、大阪では油揚げがのった蕎麦をたぬき、うどんを「きつね」と呼ぶ。京都では油揚げ+くずあんが、たぬきだ。
もり蕎麦ができるまで。
熟練のワザが光る蕎麦打ち。手の感触で厚さを見極める。
簡単そうに見えて難しいのが蕎麦打ち。「一鉢(こね)、二のし、三包丁」とか、「包丁3日、のし3月、木鉢3年」などとも言われてきた。
こねは水回しともいい、蕎麦粉に水を加えてかき回す作業のこと。蕎麦粉と水が馴染んで、小さな塊ができ、それぞれがくっついてひとまとめになったら、こね始める。
菊の花のような紋様ができるまでもみ上げて、麺棒で厚みを均一に延ばしていく。これぞ、技術の粋。厚さ1~1.5㎜程度に延ばしたら、折り畳み、駒板と呼ばれる蕎麦を大きな面で押さえる板で押しながら、端から切っていく。それをたっぷりの湯でゆでていくのだが、湯がちゃんと対流していることが大事。
ざるにあけ、水の中でざるを振りつつよく洗い、水気を切って盛りつけたら完成。
蕎麦つゆとは?
かえしとダシを加減しながら、蕎麦つゆを作る。
江戸前の場合、「かえし」と「ダシ」を別々に作り、用途に応じてミックスする。作り方によって大きく「本がえし」「生がえし」に分かれるが、醤油に味醂や砂糖を合わせ、加熱して作るのが本がえし、砂糖や味醂に水を加えて加熱したものに、生の醤油を加えるのが生がえし。
ダシは鰹節でとり、店舗によって異なるが、つけ汁(辛汁)なら、かえし1にダシ2~3、かけ汁(甘汁)なら、かえし1にダシ9~10が平均。
変わり蕎麦って?
更科粉にさまざまな風味を。蕎麦ワールドは無限⁉
更科粉(一番粉)に柚子や胡麻、シソなど、季節の豊かな香りや色を打ち込んだものが「変わり蕎麦」。色鮮やかな蕎麦を「色もの」と呼ぶ。卵入りの卵切り、抹茶入りの茶蕎麦などが代表選手。最近はレモン、ミント、オレンジ、栗などバラエティが広がっている。
蕎麦の老舗とは?
砂場、藪、更科が御三家。今も残る食の遺産を愉しむ。
最も古い歴史を持つのが〈砂場〉。大阪城築城の際、工事現場のそばの砂置き場(砂場)近くで、蕎麦を商っていた店が何軒かあり、それが店名として残った。江戸中期には江戸に進出するも、現在、関西にはその名は残らず。
次に歴史のある〈更科〉は、もともと信州で布を商っていた〈布屋太兵衛〉が麻布永坂で開業したのが始まり。〈藪〉は江戸中期発祥。雑司ヶ谷・藪之内にあった〈爺が蕎麦〉が元祖とされる。