「友達の展示に花を贈れないので代わりにアートを買っています」
「知り合いが関係しない作品は買ったことがないですね。展示のオープニングに花を贈るみたいな大人の振る舞いができないから、せめてものお祝いとして買っている感じなんです(笑)」
本棚や資料の置かれる自身のアトリエでそう語るのは、コラージュアーティストの河村康輔さんだ。
「アトリエに飾っているパネル作品は、生き別れた兄弟かと思うほど趣味が合うカリ(・デウィット)さんのもの。写真と言葉の大喜利的な組み合わせのセンスが抜群なんですよね。マーク・ゴンザレスのドローイングは、僕と同じビル内にアトリエを構えるVERDYが、大阪で始めた〈ライズ アヴァブ ギャラリー〉の開店記念に買いました。サインがなきゃ彼の作品とわからない感じが逆に面白くて、気に入っています」
もう一つ、人生で初めて購入したアートだという〈Chim↑Pom from Smappa!Group〉の作品も友達枠。2013年、〈Chim↑Pom〉が広島で展覧会を行うための資金を集めるべく販売したという絵画シリーズ《平和の日》の一枚だ。石膏やロープで描いた様々なモチーフの絵を、広島原爆の残り火とされる「平和の火」で焼き、その焦げ跡が描線になっている作品。
「当時は僕も全然金がなかったけど、友達のことはサポートしたいし、アイデアも面白かったから、なんとか10万円を作って、広島に買いに行ったんですよ。作品は叩き売りみたいに安くて3万円くらいでしたけど、新幹線の往復チケットと合わせたら、もうホテルには泊まれない。だから、買ってすぐ東京に戻ったのを覚えています。ただ、“友達だからいつでもいっか”と展示が終わってもなかなか取りに行かず……気づいたら10年が過ぎていました(笑)。
2022年にChim↑Pomが森美術館で回顧展をやったとき、“あの作品、展示していい?”と連絡があって、それを見に行ったときですね、作品と再会したのは。どんなモチーフのやつを買ったのか覚えてなかったんですけど(笑)。会期後にようやく手元に届いて、“あ、バナナだったのか”とわかったという。まぁ、ちゃんとした額装をしてもらえたんで、この額縁のために10年放置したと思うことにしています」





