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刻々と変わる書を見上げ、見下ろす。デザイナー・柏崎亮の小さなアートとの暮らし方

部屋に飾られるアートには、その人の個性が色濃く映し出されている。〈Hender Scheme〉デザイナー・柏崎亮さんはどのようにアートを選び、暮らしているのだろうか。

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: Asuka Ochi

人目見て、新城大地郎の作品の力強さに魅了されたというデザイナーの柏崎亮さん。

「文字としては抽象的ですが、圧倒的な存在感がある。沖縄県宮古島出身の作家のワイルドなキャラクターとリンクしているのもいいなと感じて。書道というと格式が高いイメージがありますが、大地郎さんの作品はタイポグラフィのような感覚で受け取れるのかなと」

黒いキャンバスに黒で書かれた阿吽(あうん)の“吽”の文字は、存在していないようで、存在している。その風景は、階段上の天窓から差し込む光で刻々と移り変わっていく。

〈Hender Scheme〉デザイナー・柏崎亮の自宅 アーティスト・新城大地郎の作品
自宅2階への階段の踊り場。天井からの自然光が作品を照らし出す。光や角度によって見え方が変わり、立体として立ち上がってくるようなものが作りたかったという作品本来のコンセプトが生きている。

「昼と夜とで文字の浮かび上がり方も全然違う。黒の上に濃度の違う黒をのせた作品を作ったのはこれが初めてと聞きましたが、すごく面白いと思いました。自分が制作をするアトリエにはなるべくノイズになるものがない方がいいけれど、普段の生活の中にあると空間がふくよかになりますね」

数年前から自らもギャラリーを運営し、作家を紹介。好きなものと出会えば、暮らしのそばに置く。

「どんな作品が好きかという嗜好性はあると思うんですけど、自分でも言葉にできるほどにはわかっていません。相対的に価値があるかどうかなどは考えず、衝動的に選びますね。むしろアートに不勉強な視点で選べる方が、豊かなんじゃないかなとも思うんです」

新城大地郎

アーティスト・新城大地郎の作品
しんじょう・だいちろう/1992年沖縄県生まれ。禅僧であり民俗学者でもある祖父の下で書道を始め、古来の形式にとらわれない書のスタイルを追求。2017年に日本で初個展。24年は夏にヨーロッパ、秋にカリフォルニアで滞在制作。