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審美眼を保つため、アートを飾り替える。写真家・アリ・マルコポロスの小さなアートとの暮らし方

部屋に飾られるアートには、その人の個性が色濃く映し出されている。写真家・アリ・マルコポロスさんはどのようにアートを選び、暮らしているのだろうか。

photo: Takeshi Matsumi / text & coordination: Shimpei Nakagawa

審美眼を保つため、アートを飾り替える

ペインティング、写真、彫刻、セラミック。大中小さまざまなモノが部屋の中に溢れ、リビングには収まり切らない額装済みの作品があちこちに並べられている。80年代からストリート、サブカルチャー、ファインアートなどさまざまなフィールドを自由に横断し、時代を写真に収めてきた写真家アリ・マルコポロスの自宅は、模様替えの真っ最中だ。

「最近、家の壁を塗り直したこともあって、パートナーと共にマイペースに作品を飾り替えしているところでね。好きな作品を日常的に眺められるのは喜びであることに違いないのだが、しばらくすると新鮮に見えなくなり、目を向けなくなることがある。

だから、時々飾るものの入れ替えをしたり、配置を変えたりしているんだ。自分の作品とトレードしたり、プレゼントされたりするものも多いけれど、今日紹介するのは自分で欲しくて購入したからか、よく飾っている。うちの定番だね。

私にとってアートは本来、アートとして売ることを目的とせずに作られるべきものだと思う。だから散歩中にふらっと立ち寄ったアンティークショップで巡り合ったこの作者不明のアンティークのスカルプチャーも、ギャラリーに飾られる作品も平等にれっきとしたアートとして付き合っている」

写真家 アリ・マルコポロス
19世紀スペインで作られたとされるムーア人の頭部像(キャビネットの上から2段目の黒い彫像)は顔立ちが気に入った。ソーホーにあるアンティークショップで購入。パートナーのカラ・ウォーカーやマシュー・バーニーの作品と共に。息子からもらったF1カーの模型も彼にとってはアートだ。

40年間、セレブリティから街行く通行人まで分け隔てなくファインダーを向け続けてきた写真家の視線は、アートに対してもフラットに向けられ、時に飾り替えることで、その新鮮な審美眼を保ち続けているようだった。

John Ahearn

写真家 アリ・マルコポロスの自宅
エイハーンの彫刻も所有するが、1988年に本人を撮影した際に購入したドローイングはお気に入り。「複雑な感情が見える表情に、人間らしさを感じることができる」
アーティスト ジョン・エイハーンの作品
ジョン・エイハーン/1951年米・ニューヨーク生まれ。人種、コミュニティ、階級主義などの社会問題をテーマに、80年代よりNYの市井の人々の石膏型を、共同制作者のリゴベルト・トーレスと制作するドキュメンタリー彫刻家。
©John Ahearn

June Leaf

写真家 アリ・マルコポロスの自宅
プライベートでも親交があるジューンが参加した2018年のグループショーでこの作品に一目惚れ。作品名《Instrument(楽器)》の通り、音を奏でられる彫刻。
アーティスト ジューン・リーフの作品
ジューン・リーフ/1929年米・シカゴ生まれ。ペンやチョーク、アクリルペイントを用いたドローイングやペインティングで人間の儚(はかな)さや脆さを表現する。写真界の巨匠、故ロバート・フランクのパートナーとしても知られる。
©Courtesy of Ortuzar Projects, New York. photo/Dario Lasagni