「唯一、食事に合わせやすい蒸留酒だよね」
米や芋などの穀物が原料であることに加え、日本の伝統文化である麹を使う焼酎は、食事との相性が良く蒸留酒随一の食中酒として愛される。麹に酵母と水を加える一次仕込み、風味のもととなる原料を加える二次仕込みと丁寧な造りでキレイな酒に仕上がる。
一方、沖縄の泡盛はタイ米、米麹、水だけを原料にした一発仕込みのため、ダイナミックな味わい。
麹もいろいろ、バラエティ豊かな味わい
原料の違いもさることながら、白麹、黄麹、黒麹と使われる麹によっても味わいや風味に違いが表れる。黒麹菌はもともと琉球から九州に伝わったもので、泡盛で使われるのは黒麹のみ。パンチの効いた味とキレの良さが際立つ。
焼酎で最もよく用いられるのは黒麹菌から突然変異で生まれた白麹菌で、穏やかでマイルドな仕上がり。また日本酒造りに用いられる黄麹を使った焼酎も増え、フルーティな香りと味わいが評価されている。
よく聞く甲類、乙類って、どこか違うの?
焼酎は、その製法の違いによって単式蒸留焼酎(乙類焼酎)、連続式蒸留焼酎(甲類焼酎)、その両方を混ぜ合わせた混和焼酎の3つに大別される。
乙類焼酎
米、芋など自然の原料を使い、麹で発酵させたもろみを単式蒸留器で蒸留させたもの。1回蒸留なので原料本来の風味や旨味が生きた味わい深い酒になる。「本格焼酎」や「泡盛」と呼ぶ。
甲類焼酎
糖蜜やタピオカなどを原料とし発酵させたものを連続式蒸留機で何度も蒸留を繰り返し加水したもの。アルコール純度が高くなる一方、原料本来の風味は失われる。一般的に「ホワイトリカー」と呼ばれる。
甲類乙類混和焼酎
甲類焼酎に少量の乙類焼酎(本格焼酎)を混ぜたもの。大手メーカーが手がけることが多い。
焼酎にもある、熟成、貯蔵の話
ウイスキー同様、焼酎にも樽や甕(かめ)などで3年以上熟成させた長期貯蔵酒がある。ウイスキー樽などで寝かせることで無色透明の焼酎に琥珀色がつき、まろやかさと木の香りが加わり芳醇な味わいに。甕貯蔵には陶器の甕などが用いられ、材質や通気性により独特の熟成が進み、まろやかな風味が生まれる。
世界が認めた本格焼酎&泡盛の産地
該当地域で定められた原料と方法で製造されたものだけが名乗ることが許される、世界貿易機関(WTO)が認定する原産地呼称。日本にもこの協定に基づいて保護された酒の原産地呼称が5つ存在するが、そのうち4つが本格焼酎、泡盛である。
熊本県球磨(くま)地方の米焼酎「球磨焼酎」、長崎県壱岐(いき)の麦焼酎「壱岐焼酎」、鹿児島県の芋焼酎「薩摩焼酎」、そして沖縄県でタイ米、黒麹菌のみを原料として造られる焼酎「琉球泡盛」。この4銘柄が国際的に認められ、シャンパン、スコッチに並ぶ、世界が認めたブランドなのだ。