2023年末にロサンゼルス・エンゼルスからロサンゼルス・ドジャースへの移籍を発表し、世界が注目するメジャーリーガー大谷翔平選手。日頃から「睡眠時間は基本的に10時間。最低でも8時間はとる」「いつ寝るかの準備を数日前から計画的に行う」と公言するように、彼の活躍を支えるのは良質な睡眠だ。
体を酷使するアスリートにとっては、「睡眠で疲れをとること」だけでなく「翌日、最高のパフォーマンスを発揮すること」も最重要課題。疲労を回復し、次の日も百点満点の活躍ができるよう、大谷選手は睡眠と真っ向から向き合っている。
何より大切なのは寝具選び。人によって体の凹凸は異なり、負荷がかかる部位も千差万別。特に野球選手は肩と臀部(でんぶ)の張りが大きいため、長い睡眠による圧力をマットレスが分散させる必要がある。そのためには自分の体に合った寝具を選ばなければならない。
大谷選手は北海道日本ハムファイターズに在籍していた2017年から寝具メーカー〈西川〉と睡眠コンディショニングサポート契約を結んでおり、3Dスキャンなどの測定を行い、体格に合わせて寝具をカスタマイズしている。愛用するマットレスは点で支える特殊立体クロススリット構造がボディラインにしなやかにフィットする「エアーSX」のレギュラー。弾力性に富んでいて寝返りが打ちやすく、それでいて大きな体を支える硬度もある。
さらに、枕を揃えて初めて睡眠環境が整う。大谷選手の場合、日本ハムからメジャーリーグへと舞台を移すに伴い体躯も大きくなった。横向きに寝たときの肩幅をしっかり支えるためにも、高さを増す必要がある。筋肉量の変化によって微調整をすべきなのは、実は枕なのだ。
さらに、どんな寝心地を求めるかもポイント。大谷選手はかつて「西川のオーダーまくら」を作ったときは硬めの“備長炭パイプ”を選んでいたが、現在は軟らかいウレタン素材の“エンジェルフロート”をセレクト。頭から肩までをしっとり包み込む、優しい眠りを求めている。いずれもカスタマイズ後は必ず寝て試し、自分の体に合うかをとことん突き詰める。
攻めの姿勢で睡眠をも味方につけた大谷選手。現在はどこでも同じ環境で眠れるように、寝具は遠征先まで持ち運ぶ。日本で開催されたワールド・ベースボール・クラシックでも、宿泊施設に持ち運び用のマットレスを持ち込んだ。試行錯誤には終わりがなく、今なお帰国のタイミングで計測を行い、その時々の自分に合った寝具を選ぶ。すべてはベストパフォーマンスのため。眠りを制する者は、世界を制するのだ。