古くから儀式や祭礼に用いられてきた仮面、あるいはマスク。神話的事象などを造形化したそれは現代にも、独自のイメージを纏(まと)い、受け継がれている。古着をはじめとしたユーズドマテリアルを素材に、ケンドリック・ラマーや小沢健二ら、国内外のミュージシャンやファッションブランドに一点物のマスクを提供してきた村山伸。自身のルーツとして長く服作りに携わってきた彼が、そもそもマスクを題材として選んだのはなぜか。
「太古の昔から人々が身に着けた、ありとあらゆるものがファッションになっていった中で、マスクだけが違った。約10年携わった服の仕事を辞めて2008年にNYへ渡った当時、ファッションと違う自分にしかできないことを探して辿り着いたのがマスクでした」
結果、それがファッションとしても求められるようになったのは不思議な因果であるが、村山はさらにマスクのその先を探求していた。今年、15年過ごしたNYから日本に移り、個展としてほぼ初めて、クライアントワークでなく自身の作品を発表する。
「これまで主に人が着用してこそのマスクを制作してきましたが、近年は身に着けなくても完結する、より彫刻的な作品に取り組んでいます。美術以前から顔をモチーフにした創作物というのが追求されてきた中で、ようやく自分にしか作れない顔を手に入れられたような感覚があるからかもしれません」
5年ほど前から構想していたというラケットマスクのシリーズなどの新作を中心に発表する本展。マスクの延長線上に表れる未知なる面の世界、その新しい創作のスタートを見届けたい。
現代の仮面はどこへ向かうのか。マスクメイカー・村山伸による“彫刻的”個展が開催中
国内外のミュージシャンやファッションブランドに一点物のマスクを提供してきたマスクメイカー・村山伸の個展が8月5日〜13日に開催。彫刻的にマスク作品を作り始めた理由について話を聞いた。
text & edit: Asuka Ochi