相米慎二監督の2本の子供映画の傑作が、この冬、4Kリマスター版でスクリーンに蘇る。一本は、両親の離婚を通して、少女がひと夏の間に成長する姿を描いた『お引越し』。もう一本は、人の「死」をテーマに、身寄りのないおじいさんと3人の男の子たちの触れ合いを描いた『夏の庭 The Friends』だ。
この2本の映画について、以前小誌の同じ企画で映画『ゴーストワールド』について対談をした俳優の穂志もえかと向里祐香に語ってもらった。
2人は、エミー賞18部門受賞に輝くドラマ『SHOGUN 将軍』の共演をきっかけに親しくなり、今ではプライベートでも大好きな映画についておしゃべりする、まるで『ゴーストワールド』のイーニドとレベッカのような関係の友人同士でもある。
相米慎二を観る、語る、そして思う
向里祐香
私は『お引越し』は観てた。
穂志もえか
私は両方とも観てなかったんだよね。『台風クラブ』や『ションベン・ライダー』は観てたんだけど。
向里
私は『ラブホテル』が大好きで、『東京上空いらっしゃいませ』とか『台風クラブ』とか。でも、一番最初に観たのがこの『お引越し』。相米さんの映画って、いつ頃知った?
穂志
私は、前の事務所で演技のレッスンを受けた時の講師が、たまたま相米さんの助監督だった人で。
向里
私は、池松壮亮さんが『台風クラブ』のTシャツを着ているのを見たのがきっかけ(笑)。でも、その当時は簡単に観られなくて、それで最初に手に取ったのが『お引越し』だった。
穂志
今回改めて思ったけど、相米さんって、高低差とか構図が独特だよね。あと、この2本は結構割ってる方だけど、相米さんと言えば長回し。
向里
相米さんのような、カメラが役者をずっと追っていくような長回しって、役者冥利に尽きるよね。相米さんはすごく厳しかったという話だし、説明しないで自分で考えろ、みたいに追い込むところもあったと思うけど、出来上がった映画を観ると、子供たちも伸び伸び演技してるように見えるのが不思議。その瞬間瞬間のリアルが切り取られているように見える。
穂志
きっとキツい現場だったとは思うけど、私もそういう役者の創造性に委ねられるような現場をもっとやってみたいな。『生きててごめんなさい』の時とかはそんな感じだったよ。
向里
リアルといえば、『夏の庭 The Friends』のプールに子供たちが浮いているシーン。自分の呼吸が、あんなふうに聞こえる感じとかわかる?
穂志
わかる!音の作り込みもすごい。
向里
こんなことってあったかもって、子供の頃の感覚みたいなものが、本当にリアルに蘇ってくる。
穂志
これはネタバレになるけど、『お引越し』のラストの主人公のあの言葉の意味ってどう思った?
向里
あれでしょ?あのシーンには、ちょっと違和感のある言葉だよね。
穂志
だからこそ、こちらに投げられたボールというか、考えさせられるところがある。
向里
それって、ある意味『ゴーストワールド』のラストと同じだよね。いろんな解釈ができる。
穂志
繋がったね!そうだ、今年も鍋パやろう!この続きはまたそこでね!
向里
うん、ぜひやろう!