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新時代の作り手を訪ねて。陶芸家・福村龍太

作り手にとって20〜30代は成長期と成熟期の狭間であり、次々と面白い作品が生まれる時期でもある。そんな注目の若手作家を、識者に推薦してもらった。これからの時代を担うホープたちが作り出す唯一無二の日用品とは?

Photo: Taijiro Hirayama / Text: Wakako Miyake

一つの作風にとどまらず
常に新しいことに挑戦する

金属のようにも見える銀彩の半磁器は、福岡県うきは市で〈日月窯〉を営む福村龍太さんの独創である。この地に登り窯を造り、開窯したのは、父・元宏さんだが、今や窯で焼く7割は、龍太さんの作品だという。「大学で陶芸を勉強して、卒業後に陶芸家の父の後を継ぐような形で実家に戻りました」

福村龍太 半磁器による銀彩のカップ
有田の土を使った、半磁器による銀彩のカップ。¥8,000。

ただ、始めた頃は後継者としての意識があるだけで、父の作品を踏襲するようなもの作りをしていた。それが、だんだん自分の作風ができてきたことによって、陶芸の深さと面白みに気づくように。
「僕は、特に銀彩や鉄系の釉薬を扱うのを得意としています。その釉薬を生み出した時に、自分のスタイルができ、それを貫いていいんだ、という自信がつきました」

できるまでは試行錯誤。釉薬は、材料の調合が数㎎変わるだけで色が違ってくるし、土の産地や焼成温度、窯入れの密度や場所でも変化する。無限とも思える可能性を何度も試しながら、ようやく銀彩の作品が誕生したのが約6年前のこと。

「銀彩は、通常の4倍くらいの時間がかかります。やり方は一通りではないのですが、白釉をかけた上に、気泡の出るマンガン系の釉をかけるので、焼き上がった時はボコボコしているんです。それをグラインダーで削り、さらにペーパーで滑らかになるまで磨きます。その上から銀を塗って、また焼きます。つまり、何層にもなっているんです」

にこやかな表情を浮かべ、優しい口調で話す福村さん。だが、穏やかな印象と裏腹に作品に対する熱量の高さは、その手間のかけようにも表れている。しかし、これで満足しているわけではない。「常にやりたいことが頭の中にあります。今、年に3回程度で個展をしていますが、毎回、新しいものを発表していくつもりです」

これから挑戦したいのは、薪窯で起こる偶発的な変化に着目したもの。「銀彩は低温で焼くので、使うのは電気とガス窯で、比較的、熱のコントロールがしやすいんです。ただ、うちには登り窯もあるので、薪窯でしかできない、灰をかけた作品も増やしていきたいと思っています」

さらに、いずれは地面を掘る、穴窯も造りたいと考えている。今の作風に固執することなく、トライ&エラーを繰り返し、新たな道を切り拓いていく。陶芸を始めて13年目。経験を積み、体力が充実している31歳という年齢も、これからの進化を期待させてくれる。

福村龍太の作業風景
レコードは父親の趣味。音楽をかけながらろくろを回す。

大切なのは素直さと懸命さ
成長を見守ってほしい作家

推薦者・西坂晃一

彼が初めてお客さんとして来た時、ものの持ち方や振る舞いで、もの作りをしている人だとわかりました。興味が湧いたので聞いてみると陶芸をやっていると言うので、作品の現物を見る前にその場で30点ほど注文しました。僕は人間が素直なら、作品はやりとりを重ねて良くなると思っているので、重視するのはそこです。

福村さんは穏やかな人柄なのですが、陶芸一筋でやっていくという強い意志と、内に秘めた野心が魅力ですね。