Visit

PR

Visit

訪れる

PR

都内にいながら離島でワーケーション。BRUTUS.jp編集部員の式根島滞在記

走る車は品川ナンバー。でも、ここは銀座にある編集部から海を160kmほど南下した式根島だ。旅先で、仕事をしながら休暇を満喫するワーケーション。非日常のなかで仕事ができるのか、すべきなのか。東京の離島が人気らしいが、行ってみないと分からないということで、BRUTUS.jp編集部員による、2泊3日のワーケーション体験記。

photo: Daisuke Hashihara / text: Takuro Shii

「たまには、ワーケーションでもしてきたら?」

編集部で上司が口にした何気ない一言から始まった。行き先に選んだのは、東京の離島・式根島。地図で見ると新島に寄り添うように位置している。外周約12kmの土地に約500人の島民が暮らす伊豆諸島の小さな島だ。

都内から式根島に向かうにはいくつかのルートがあるが、今回はせっかくの島への旅なので、約11時間かけて海を渡る大型客船ルートを選択した。

22時、東海汽船の竹芝客船ターミナルから船に乗り込み、東京の夜景を眺めていると、船が出港。いよいよ式根島への旅が始まる。今回利用した特1等室は4名定員の2段ベットタイプの部屋。プライベートが確保されていて、もちろん電源もある。想像していたほど揺れないし、居心地はいい。

周りを見ると、離島の住民と思しき人や、釣り客など、平日ということもありさほど混んでいない。食堂で一杯だけビールを飲み、いつもより少しだけ早めに眠りに就いた。

翌朝7時40分、船の汽笛で目を覚ますと、式根島の2つ手前の島、利島(としま)に寄港しているところだった。海の上で目覚めるという非日常の体験に旅情が漲る。

船のデッキから海を眺める男性
ようやく式根島が見えてきた。今回利用した特1等室はグループ利用に適した4名定員の部屋で、1名につき16,760円。詳しくは東海汽船のHPをチェック。

利島からは、新島経由で1時間ちょっと。デッキから景色をボーっと眺めていると、「間もなく式根島」とアナウンスが。いよいよ上陸だ。島旅は上陸する前のこのワクワク感がたまらない。

船に揺られること約11時間、式根島へと降り立つ

島に降り立った瞬間、ふっと肩の力が抜けるのを感じる。聞こえてくるのは、静かな波の音と鳥の鳴き声だけ。いきなり島時間に引きずり込まれた感覚だ。ここが都内とは、にわかに信じがたい。

今回の旅の目的はワーケーション。とはいえ、島に来て早々仕事に取り掛かるのも味気ないので、少し散歩をすることに。港からすぐの場所にある観光協会に立ち寄ると、泊海水浴場を案内してくれた。

野伏港から歩くこと5分。ビーチに着くと、そこには視界いっぱいに広がる青く澄んだ海と青空が。しかも先客はなし。

この景色を独り占めできる贅沢さを噛み締め、波と風の音に耳を澄ませる。雄大な自然の中に身を置くと、日々の小さな悩みは消え、頭の中がクリアになる。

大自然のパワーをたっぷりといただいたところで、宿に向かい、仕事を始めることにする。宿に着く頃には10時半。銀座ではチームのみんなが動き出した頃だ。早速、Slackでやりとりしながら、特集を決める会議を始める。

知り合いのいない遠く離れた場所に身を置くと、メールの返信やカレンダーの予定に追われ、あれをしなきゃ、これをしなきゃ、という焦りもなく、自分のペースで仕事を進めることができる。

仕事の合間にグルメ、温泉ホッピング。日常と非日常を行き来する

仕事に没頭していると、気づけば昼下がり。お腹も空いたので宿から歩いてすぐの食堂〈サンバレー〉へ。

旅の醍醐味と言えばやっぱり食。式根島の名物・ネギトリラーメンは、鶏肉とネギがたっぷりと盛られ、ボリューム満点。名産の島唐辛子を軽く振っていただく。

「昔は、山は軽井沢、海は式根島なんて言われたもんだ。本当にいっぱい人が来てたんだよ」

料理を食べているあいだ、店主の梅田さんが式根島のことをたくさん教えてくれた。

お腹を満たした後は、島を散策するためサイクリングへ。島の外周が約12kmとコンパクトなので、移動はレンタル自転車が便利。1〜2時間もあれば島を一周できるようだ。

式根島には海に面した天然の温泉が3つある。どれも混浴で水着必須だが、24時間無料で入ることができる。しかも宿の集中するエリアから温泉まで、自転車で5分ほどと聞けば、行かない手はない。散歩をする感覚で温泉に入れる。

再び宿に戻り、自分でも驚くくらい仕事をこなしていたら、気付けば17時。今度は松が下雅湯に。毎日こんな息抜きが出来たら最高だ。

仕事終わりなのか島民の方々も集まってきて、湯に浸かりながら世間話がはじまる。この島では全員がご近所さんのようだ。

足湯に浸かりながら、リモートワークをする男性
松が下雅湯には、足湯に入りながら作業できるスペースがあるので(なんとフリーWi-Fiも)、ここぞとばかりにパソコンを広げて、なかなか手を付けられずにいた連載の企画に時間を使う。

温泉に入り身体も温まったので、宿に戻り夕食までラストスパート。SNSの更新や来週の会議の準備を終わらせる。島に来るまでは、普段通り仕事ができるのか少しだけ不安な部分もあったが、むしろいつもよりも時間やメリハリを意識するので、溜まっていたタスクも順調にこなし、今日は早めに切り上げられそうだ。

夕食の時間。宿の食事は、式根島名物・あしたばの天ぷらや島で穫れた魚など、島の食材をふんだんに使った滋味深い料理がありがたい。

イサキの煮付けや自家製の野菜、あしたばの天ぷら
島での夕食は、宿でいただくのが基本。〈ゲストハウスひだぶん〉では、島で穫れたイサキの煮付けや自家製の野菜、名物あしたばの天ぷらなどがいただける。

夕食後、本日最後のひと仕事を終えたところで、星空を見るために近くのぐんじ山展望台まで向かってみる。

宿を出る際、女将さんに「今日は天気が悪いから難しいかもね」と言われたが、離島に来たからには、満天の星をなんとしても見たい。その一心で人気のない道を進み展望台まで辿り着いた。

雲が厚くかかっていたものの徐々に星が現れ、30分ほどするとさっきまでの曇り空が嘘のように、満天の星が広がっていた。

星空
都心に比べ空気が澄んでおり、外灯なども少ないため、こんなにも綺麗な星空が拝める。

「東京の空にもこんな星があったんだ」

生まれて初めて目にした一面の星空に、感嘆の声が漏れる。なんと贅沢な体験だろう。時間が経つのを忘れて、ただただ見惚れる。

視界いっぱいに広がる星空を目の当たりにした後は、スマホに手が伸びるはずもなく、デジタルデトックス。いつもは深夜まで夜更かししてしまうが、24時には自然と瞼が重くなる。今日の思い出をひとつひとつ振り返りながら、眠りに就いた。

釣りも満喫したら、東京本土へ

2日目。いつもは9時過ぎまで寝てしまうが、目覚ましが鳴るより早く目が覚めた。メールチェックなど、気分も軽やかに1時間ほど仕事をする。

宿の朝食を食べたあとは、外から聞こえる波の音に誘われ、近くの海水浴場まで散歩に。毎日、こんな朝を迎えることができたらどれだけ良いだろう。

昼前には帰路につく予定だが、少し時間があるのでそれまで釣りを楽しむことにした。

数年ぶりの釣りに、意気込みは充分だったが、残念ながら一匹も釣ることはできず。ただ、港の船着場からウミガメが泳いでいるところを見られたのは驚いた。これもいい思い出だ。

そうこうしていると、もう帰りの時間だ。後ろ髪を引かれながら、港へ向かう。

自然のリズムの中で暮らす島の人々のことを思い出し、いかに自分が決まりきったルーティンの中で生活をしているかを思い知らされた。自分と向き合う時間をつくれるのも、ワーケーションの醍醐味だ。

帰りは連絡船で約20分の新島に渡り、飛行機で調布に飛ぶルートに。なんと40分ほどのショートフライトだ。東京に戻ったら、チームのみんなにもおすすめしたいし、自分自身もまた必ず訪れることになるだろうと思った。

式根島 ワーケーションモデルプラン

DAY1
22:00 竹芝客船ターミナルから「さるびあ丸」に乗り出発
DAY2
09:05 式根島に到着
09:30 泊海水浴場へ
10:30 〈ゲストハウスひだぶん〉にチェックインし、リモートワーク
13:00 〈サンバレー〉で昼食
14:00 サイクリング。〈おくやま〉、地鉈温泉へ
15:00 リモートワーク
17:00 松が下雅湯へ
19:00 〈ゲストハウスひだぶん〉で夕食
20:00 リモートワーク
22:00 夜景を見に、ぐんじ山展望台へ
23:30 就寝
DAY3
7:00 起床
8:00 〈ゲストハウスひだぶん〉で朝食
9:00 〈宮房釣具店〉で釣具をレンタルし、釣りへ
11:00 連絡船で新島へ
14:10 新島から飛行機で調布飛行場へ

東京宝島事業

式根島、新島など東京の11の島々のブランディングを行う事業。詳しくは以下HPをご覧ください。
HP:https://www.t-treasureislands.metro.tokyo.lg.jp/index.html