「『攻殻機動隊』が自分をグッと大人にしてくれた。」俳優・矢本悠馬の目覚めるSF
photo: Kodai Kobayashi / styling: Yasuka Lee / hair&make: Taro Yoshida / text: BRUTUS
極限状態の世界で、根源的な“愛”に到達する
子供の頃、親父に『仮面ライダー』を見せてもらったのが入口。昭和の仮面ライダーは個人的にすごくSFを感じます。ショッカー戦闘員が倒れた後、泡状になって消滅するのも、秘密結社として理にかなっている。ビームとか特効とか、演出に派手さがある作品に惹かれることが多いですね。
小学3年生のときは『攻殻機動隊』の漫画を初めて読んで、子供ながらに自分たちの未来を見透かされているような気がしました。大人のためのSF作品という感じで、背伸びして読んでいましたね。自分をグッと大人にしてくれた。
今はネット社会になって、携帯で恋愛するのも普通になったし、人間が進化していくと、それぞれの関係性は薄まっていく一方。でもその中で、SF作品は最終的に“愛”に行き着くと思う。非現実的な極限状態の中で、人間の根幹に関わる愛を描いている作品に惹かれます。
好きな作品は子供にも共有していて、今では僕よりも詳しくなっている。自分もずっと感覚は変わらないので、大人になったら、それこそ孫も一緒に、好きなSFの話ができたらいいなと想像しています。
俳優・矢本悠馬が選ぶSF作品3選
アニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』
監督:神山健治/2002〜03年放送
2030年、電脳技術が発達した社会を舞台にした士郎正宗原作のテレビアニメ。「人間とロボットの境界線が曖昧になった世界で自分とは何かを考えさせられる。一話ごとに事件が起こるので探偵ものを観ている気持ちに」
漫画『天国大魔境』
著:石黒正数/2018年~連載中
荒廃した未来の日本と、壁に囲まれた清潔な学園。2つの世界が交錯する少年少女の大冒険。「伏線がどんどん回収されていく気持ちよさが魅力。どんな姿になっても愛を選ぶ子供たちの純粋な関係性に心を打たれます」
ドラマ『三体』
監督:デレク・ツァンほか/2024年配信
劉慈欣(りゅうじきん)の大ヒット小説をNetflixが実写ドラマ化。父を惨殺された科学者の絶望から始まる、人類の運命を懸けた壮大なストーリー。「これまで観てきた侵略ものと違い、科学力で戦う設定と緊張感が衝撃でした」
矢本悠馬(やもと・ゆうま)
1990年京都府生まれ。2003年に映画『ぼくんち』でスクリーンデビュー。24年は映画『ゴールデンカムイ』、ドラマでは『Destiny』や『イップス』などに出演。