日常生活では気づけない、現実の延長線に夢を見た
“怖いSF”を、昔から好んで観ていたと思います。よく覚えているのが『ブレイブ・リトル・トースター』というアニメ。家電のトースターが主人公で、長年放置されていた掃除機やランプたちと一緒に、ご主人の元へと会いに行く旅が描かれます。モノに対する人間の残酷さを強く意識したし、普通に生活していると気づかない世界を見せてくれる物語に恐怖とワクワクを同時に抱いていました。
カート・ヴォネガット・ジュニアの作品やディストピア小説『すばらしい新世界』のような古典SFも好き。映画だと『トゥルーマン・ショー』も、現実と地続きの怖い社会を映していますよね。
自分の思想に大きな影響を及ぼしているのは、ドラマシリーズの『新スター・トレック』。24世紀を舞台に、宇宙船エンタープライズ号のクルーたちが新しい生命と文明を求めて航海する物語。科学と芸術が共存した、私の理想の未来社会が描かれています。何か問題に直面すると、クルーたちがオープンに意見をぶつけ合い、公平な結論に辿り着くのが好きで。気づいたらいつもその議論にのめり込んでいます。
市川紗椰が選ぶSF作品3選
ゲーム『Fallout 3』
開発:ベセスダ・ソフトワークス/2008年発売
核戦争後の荒廃した世界を描くFalloutシリーズの3作目。広大なマップを自由に散策できるオープンワールドRPG。「地下シェルターである“Vault”に多様な物語が詰まっていて、巡るだけで楽しいです」
ドラマ『エクスパンス 〜巨獣めざめる〜』
制作:マーク・ファーガス、ホーク・オストビー/2015~22年配信
200年後の宇宙。地球と火星と小惑星帯の政治的緊張が高まる中、巨大な陰謀が主人公たちに迫る。「テクノロジーの発展が社会に及ぼす影響。それがリアルに伝わってくる世界観です」
ドラマ『ウエストワールド』
製作総指揮:ジョナサン・ノーラン、リサ・ジョイほか/2016~22年放送
暴力、殺人なんでもあり。そのすべてがアトラクションの世界で、アンドロイドが異常な行動を起こし始める。「第1シーズンが特に好き。複数の視点が交差する構成が巧み」