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ビル・ゲイツ、C・ロナウド、藤井聡太etc. 天才たちのユニークな睡眠スタイル

ITやスポーツなど第一線で活躍する現役の天才たちは睡眠スタイルもユニーク。スリープコーチ角谷リョウさんに、その特徴を解説してもらいました。

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illustration: Hitoshi Kuroki / text: Yoko Hasada

教えてくれた人:角谷リョウ(スリープコーチ)

働く人にとって重要なのは、いかにベストな状態を保って仕事に取り組めるかということ。パフォーマンスを最大化するため、睡眠をどうとるかがポイントになります。眠り方には「短眠」「長眠」「二分割」「多分割」「フレックス」といった複数の種類があり、人それぞれ仕事や生活のフェーズによって最適な睡眠方法は異なると、私は考えています。

バリバリ働いて結果を出すビジネスパーソンに多いのが、仕事に打ち込むためある一定の時期に短眠になり、軌道に乗ってきたら長眠になるタイプ。「理想は8時間」と聞きますが、ベストな睡眠時間には個人差があり、万人に共通する答えはないんです。

一線で活躍する偉才たちに共通して言えるのは、季節や年齢、食事内容、その日の活動量も踏まえて自分の睡眠特性を探求し、自分なりの“快眠スタイル”を確立していること。また、睡眠はパフォーマンスを向上させるための一つの手段として捉えているため「なぜ快眠したいのか?」という目的が明確。すると、睡眠習慣がつきやすくなります。

ルーティンが定まったら、周囲に公言すると周りの協力を得られてより実行しやすくなるはずです。短い睡眠時間でパフォーマンスを発揮したい人には分割睡眠がおすすめ。帰宅後に90分寝ると頭がクリアな状態になり、深夜の趣味や副業にも集中できますよ。

ビル・ゲイツ

黒木仁史 イラスト

ライフステージに合わせて睡眠習慣も大胆にチェンジ

マイクロソフト創業当時は徹夜が当たり前。しかし近年、考えが一変。マシュー・ウォーカー著『睡眠こそ最強の解決策である』を愛読し、良質な睡眠のために環境改善に努めた。寝室の電球は非ブルーライトのものに交換し、寝る前は室温を1~2℃低くキープ&飲酒を制限するなど、様々なリチュアルを実践(*1)。

「多忙な時期は戦略的に短眠型に、余裕が出てきたら改眠する、自身の最も寝やすく快適な睡眠を目指す王道パターン。人生のフェーズや目的によって睡眠スタイルを変え、成功した良い例ですね」(角谷さん、以下同)

アリアナ・ハフィントン

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気持ちよく働くため生活とのバランスを追求したスタイル

「ハフィントンポスト」創設者のアリアナ・ハフィントンは、かつて週7日、1日18時間働き過労で倒れた経験が。以来8時間睡眠を徹底し、睡眠の偉大さを説いた書籍『スリープ・レボリューション 最高の結果を残すための「睡眠革命」』を出版。多忙な中でも寝る時間を確保するため、仕事の優先順位を頻繁に見直し。さらに業務の終了時刻を決め未完のTO DOを翌日に回すなど時間を管理している(*2)。

「昨今は仕事の幸福度やメンタルヘルスが最重要。睡眠を軸にしたワークライフバランスの取り方は参考になります」

サム・アルトマン

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ガジェットを味方に自分にとってベストな睡眠スタイルを探求

ChatGPTで一躍注目を浴びた彼は「睡眠は生産性を上げるために最重要」と公言。マットレスや食事量を変えるなど様々な方法を試してはEmfit QS(毎日の睡眠をスコア化するベッドマットセンサー)で計測し、最適な睡眠方法を探究中。また体温による形状調整が可能なテンピュールのマットレス、暑い季節は冷たいパッドを併用。出張時には耳栓とアイマスクで完璧な環境を整える(*3)。

「一般論に惑わされず、自分の最適スタイルを探し求める姿勢が良い。睡眠トラッカーは自分の特性を知るのに便利。学会や医療現場でも推奨されています」

マーク・ザッカーバーグ

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どれだけ多忙でも睡眠のルーティンは徹底して守る

Facebookを創業、Instagramなど世界的なSNSサービス運営に携わる。どんなに忙しくても睡眠ルーティンを守り、朝8時起床、18時に夕食、19時から運動と家族との団欒(だんらん)、その後22時~翌3時に作業して就寝、を習慣化していた。事業が落ち着いてからは8時間の睡眠時間を死守し、優雅な睡眠ライフを送る(*4)。

「朝から働く部下たちのため、夜中に働くトップリーダーも多い。どれだけ短い睡眠時間でパフォーマンスを最大化できるか、様々なパターンを試行錯誤したからこそ辿り着けた、個性的な睡眠スタイルだと思います」

ネイサン・チェン

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睡眠を最重要視する五輪代表アスリートの徹底したルーティン

オリンピックに出場する傍らイェール大学で統計学を学び、学業と競技を両立させるネイサン・チェン。「睡眠のメカニズムの研究をしたい」と語るほど、眠りの時間を重要視する。そのルーティンは、毎日10時間寝て同じ時間に起床。就寝前はブルーライトを浴びないようスマホを遠ざけ、カモミールティーを飲んでリラックス。横になってからその日一番嬉しかったことを思い浮かべて眠りに就く(*5)。

「常にマインドを良好な状態に保つルーティンや、自分に合った睡眠サイクルを見つけることは重要。就寝前のハーブティーも効果的です」

クリスティアーノ・ロナウド

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90分×5回の睡眠。世界的スリープコーチ考案の驚きの秘策

レアル・マドリード在籍時、当時の睡眠コーチのニック・リトルヘイルズの指導の下、一風変わった方法を取り入れていたそう。それは「90分サイクル」をベースに、1日あたり90分×5回眠るという「分割睡眠」。食事のタイミングが睡眠の質を左右するとし、就寝3時間前には必ず夕食を食べ終えるなど、良質な睡眠のための厳格なルールがあった(*6)。

「非常に特殊な睡眠法。一般的に真似しやすいかはさておき、食事が眠りのクオリティに大きく影響することは確か。遅くとも就寝3時間前には食べ終え、アルコールも控えると吉です」

藤井聡太

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幸福度を上げる二度寝を取り入れパワーを発揮

史上初の全8タイトル制覇という偉業を成し遂げた藤井聡太八冠。彼の一番のリラックス方法は寝ること。連日続くタイトル戦に万全な状態で臨むため、対局の準備よりも7時間睡眠を確保することを意識。オフの日は自宅で二度寝して、結果的に10時間寝ることもあるという(*7)。

「二度寝をすると幸福感を感じるホルモンが分泌されて、ある種の瞑想状態に。ストレスを和らげる効果が実証されています。ポイントは二度寝の長さを最長20分にとどめること。それ以上はホルモンの分泌量が落ち、逆効果になるので注意しましょう」

偉業を支える天才の「眠り方」とは?大谷翔平の睡眠術