大學(大町)
〈大學〉店主・大學(だいがく)善一さんと真理さん夫妻のざっくばらんな雰囲気に、客は知らず知らず気分が明るくなる。この2人、〈Love Song〉の板垣卓也さんの愛弟子といっていい。
勤めていたホテルが震災前年に閉店となり、誘われて、板垣さんが営む店で働くことに。そして、独立。現在の店舗は探しに探し、2年かかってやっと見つかった物件だった。間もなく5周年になる。

最初は、乾き物とナチュラルワインの店だった。1年後、コロナがやってきた。休まないと決めて店を開いていたら、「何か作ってほしい」という常連客が多かった。だけど、料理人ではないから、作れるのはおうちご飯のようなもの。「それでもいい。実家みたいでいい」と客。
ならば、もっと勉強しようと真理さん、頑張った。作ってみたいと思ったものはすぐに作った。作ってみてわからないことは、それまで出会ったシェフたちに遠慮なく聞いた。そうして、一品ずつ魅力的なメニューが増えていった。



ポイントは、「おいしい」はもちろんだが、「お酒に合うかどうか」だ。合わせるにはどうしたらいいか。試飲&試食しながら、ワイン担当の夫ともよく相談し合った。夫・善一さんは、惚れ込んだ造り手を訪ね、またインポーターとも親交を深めていった。時には夫婦で収穫の手伝いにも行く。
フードは、水餃子やチヂミ、焼きそばに黒酢酢豚、ナポリタンなど、気取りのない身近な料理が並ぶ。これぞ実家感覚、いいじゃないか。大學夫妻ならではの“ワインスナック”は、まだまだこれから花開く。

Love Song(大町)
ナチュラルワインを広めてきた仙台のリーダーに会う
何にしても、先駆者たる人物に苦労はつきものだ。〈ラブソング〉店主・板垣卓也さんもそうだった。2002年、普段着のフランス料理を伝えたいと〈ブラッスリー ノート〉を開いた板垣さん。フレンチをやるからにはワインは欠かせないが、当時は、飲めてもせいぜい1~2杯だった。
ところが04年、南仏・ローヌの大岡弘武さん率いる〈ラ・グランド・コリーヌ〉のワインを飲んで衝撃を受ける。1本するりと飲めてしまったのだ。以来、ナチュラルワインの虜(とりこ)に。調べ、学び、生産者に会い、店のワインをナチュラルな生産者のものに替えていった。
10年過ぎる頃、手がける店は3軒となり、いつしか、仙台でナチュラルワインの伝道師的な存在になっていた。板垣さんは考えた。これからは、若い人たちを応援する側に回りたい。広げていくのではなく、絞り込んで深く根を張りたい。そして、未来を見据えて、若い人たちにバトンを渡していきたい。そう決めた。
そして2023年、この〈ラブソング〉を開いた。ボトル販売とおすすめワインの有料試飲ができるスペースだ。潔く、カッコいい。