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写真の異才と音楽の異才の共通点。最新作『流離 access memory of 森山大道』を山本精一が語る

写真家・森山大道の作品をテーマにしたアルバム、『流離 access memory of 森山大道』を発表した音楽家・山本精一に聞いた2人の共通点。

photo: Shingo Kanagawa / edit: Mira Tezuka

絶えず不安がある。俺は何がしたいんだろうって

日本のオルタナティブミュージック・シーンを牽引し、音楽のみならず文章や絵画など様々な形で表現活動を行ってきた音楽家・山本精一。11月5日に、写真家・森山大道の作品をテーマにしたアルバム『流離 access memory of 森山大道』を発表した。

「音楽も文章も絵も写真も、自分の場合は全部一緒。音楽もやっぱり言語表現だし、写真も視覚の言語。全部、言葉なんです。でも意味からは逃げていたい。そのさじ加減がうまくいったときに名作が生まれる。俺は何がしたいんだろうと絶えず不安がありますから。でもまあいいかって」

写真の異才と音楽の異才。2人の共通点とは

カメラは100台、レンズは300個持っている。10歳の頃から写真を撮っていたという山本精一。自身の作品のジャケットもほとんど自分で撮影している。当然、森山大道の写真にもかねて触れてきた。

「森山さんの写真から音楽を作るという企画をある方から提案されたことが、制作のきっかけでした。しかし、写真から音楽を作るのは難しい。映画のサントラとは違います。映画には時間が流れているから、音楽とも関連させられるけど、写真というのは一つのイメージですから。

考えるうちに、自分のソロ作品として作ろうと思うようになりました。そうすれば逆に森山さんの要素が入ってくるんじゃないか、それが本当の意味でのコラボだろうと。そうでないと、森山さんのバックバンドになってしまう。これは即興演奏のメソッドです。

即興というのは誰かが中心になってはいけない。目立ちやすいボーカルやドラムが中心になってはダメなんです。実際、1曲目の『流離』のバイオリンなどは、自分の純粋なソロ作品だったらこうはならないという音になっている。無意識のうちに森山写真の要素が入っていて、そこが一番面白いところだと思います」

ありふれた風景や人々の営みを切り取り、日常を異化していく森山のスナップ写真。そこには、聴く者の目の前に異世界を出現させる山本の音楽との共通点がある。

「森山さんの写真はリアルを撮っているのに、リアリズムではない。シュールだし、つげ義春の漫画のようでもある。まるで舞台の書き割りのように、裏に回ったら何もないような気もしてくる。そのあたりは、自分と似ているかもしれません。自分の場合もリアルなことを歌っているわけではないですから。森山さんは昔のインタビューを読んでも、根本的には何が言いたいのか、よくわからなくて、捉えどころがない。そのへんも俺と似ている。あれ、結構似ているのかもしれないな」