6日目:この旅の念願〈SALT〉。サウナは忘れられた文化
サウナ筏(いかだ)が浮かぶ湾岸をさらに奥へ進むと、この旅の念願だった〈SALT〉があった。〈SALT〉はミュージックカルチャーとサウナを融合させた世界的にも稀有なイベントスペース。巨大なサウナ室では、ライブやDJパーティなどを定期的に開催しているという。
この場所で創設者の一人であるアーランド・モーゴド・ラーセンに会うことができた。「あなたにとってサウナとは?」と質問してみると、柔和な雰囲気の彼は、少し考えて「食事や呼吸と同じくらい大切なものだよ」と笑顔で答えてくれた。
アーランドによると「そもそもノルウェー人にとってサウナとは、忘れられた文化なのだ」という。
「ノルウェーにやってきたキリスト教の司祭が、男女が服を脱いで一緒にサウナに入ることを禁じてしまったんです。その結果、ノルウェーはサウナ文化が衰退。隣国のサウナ大国フィンランドと逆の道を歩みました」
それでもアーランドをはじめとするノルウェーのサウナーたちの活動によって、近年サウナが見直されるようになった。最近では国内のサウナ施設の数も増えているのだという。
ノルウェーのサウナ史を研究しているアーランドはインテリだ。彼のように、海外のサウナに携わる人たちが真面目に日々サウナを勉強しているのは、地域の人々に役立てたいと考えているからだ。
「15世紀の文献に、昔のノルウェー人は土曜日になるとサウナへ行って体と魂を綺麗にしていたと記述があります。昔も今も必要なものは同じだと、私は思っています」
酒を飲み、笑い合い、サウナに入ることは魂の洗濯だ。そしてサウナがあることで地域が活性化し、人々が豊かになれる。アーランドやノルウェーのサウナーたちの物語に勇気をもらった一日となった。