みんなの本音がポロリする。時代を詠み、時代を読むサラ川

川柳といえば、サラ川? という方も少なくないのでは。通称サラ川(せん)こと「サラリーマン川柳コンクール」。第一生命が主催し今年で35回を数える恒例の人気企画。でも、なぜ保険会社が川柳?

illustration: sigokun / text: Yusuke Nakamura

サラ川とは? 62,657句の中からベスト10発表!

サラリーマン川柳とは「なんてことはない日常生活のあれこれを楽しむためにユーモアたっぷりに表現するもの」と話すのは、サラリーマン川柳コンクール担当・井出麻郁子さんと山本実和さん。

聞けば、第一生命の社内のお楽しみ企画がサラ川の発端。1985年に社内報で川柳のコンクールが始まり「かなり好評だったので」1987年から「社内だけでなく広く公募してやってみることに」なったのだそう。

選考方法はまず社内投票で100句を選出。そこから一般投票を経て1位から100位までが決定する。今年の応募は62,657句、そして61,789人からの投票があった。毎年「笑ってしまうもの、共感できるものが選ばれますね。うまい句でもネガティブなものだと票が集まりません」。

今年は第1位から4位までが2,000票代と例年に比べ、かなり僅差となったようだ。というわけで先日、発表された第35回のベスト10がこちら。

第10位 

ズーム中 ペット参加で 盛り上がる

犬家猫(40代)

第9位 

デジタル化 しますと紙で 通知する

IoT推進部(20代)

第8位 

恋心 マスク外せば 花と散る

ちゃかしっこ(30代)
サラ川8位作品

第7位 

あっ、マスク! 降りた階段 また登り

花園の迷宮(60代)

第6位 

マスクとる 緊急事態 ノーメイク

ちろすけ(30代)

第5位 

マスク顔 確信持てず 見つめ合う

福笑い(50代)

第4位 

巣ごもりで MからLに 服反応

ダイエット(60代)

第3位 

にこやかに マスクの下で「うっせぇわ!」

ヨッシー(70代)

第2位 

ウイルスも 上司の指示も 変異する

K・U(60代)

第1位 

8時だよ!! 昔は集合 今閉店

山のパン屋(30代)
サラ川1位作品

オヤジギャグさえも武器。それがサラ川

コロナ禍の状況をテーマにした句が9つ。そのうち、マスクのネタは5つ、とここまで世相を映し出してくるとは。「そこがサラリーマン川柳の魅力だと思います。昨年はマスクがわずらわしいとか、テレワークって?みたいな句が多かったのですが、今回は同じコロナ禍でも状況の受け取り方がすいぶん変わってきている状況が浮き彫りになっているようです」。

思わずクスッと笑ってしまう、時事への本音はいわずもがな、オヤジギャグさえも救われる。これはサラ川ならではかもしれない。現在、サラ川のスピンオフ企画として、地元ならではのネタを盛り込むサラリーマン川柳=ジモサラ、20代限定の今どきサラリーマン川柳=イマサラも登場、と新展開も。

そして本家「サラリーマン川柳」も次回から名称を「サラっと一句! 第一生命 わたしの川柳コンクール」に変更し、より幅広く投句を募っていくそうだ。奮って投句されたし。