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御徒町〈サンリミット〉雑居ビルに潜む異空間で、隠された一点ものに出会う

専門店や小売店がひしめき合い、昭和の香りを残す東京・上野のアメ横。その雑居ビルの2階に、潜むかのように店を構えるサンリミット。外の喧騒と隔絶された広々とした空間には、服が見栄えよく並んでいる。2017年3月15日発売ファッション特大号『忘れられない買い物』特集の取材記事です。

聖地・アメ横。驚きの異空間で一点ものに出会う

デザイナーの門田雄介が、自身のブランド、〈サンリミット〉の店をここに構えたのは2014年。大きな窓から、ちょうど向かいにある老舗ミリタリーショップ・中田商店を見下ろせる、アメ横きっての好立地だ。

「表参道や渋谷は飽和状態だし、なんとなく東京の東側に出店したかったんです。ここは周りにムラサキスポーツやABCマートの本店なんかがある、いわば洋服の聖地。たまたまこの物件がピンポイントで空いていたのはラッキーでした」と門田は話す。

自然光に照らされた店内には、アメリカやイギリスのヴィンテージ家具が配置され、老舗のような懐かしさと古めかしさが漂う。彼の作る服は、一言で表現するならベーシック。どのアイテムもシーズンレスでいつまでも着られるような安心感がある。

「シーズンごとにブレない服作りが基本で、生地もベーシックなものが多いです。パターンを自分で引くので、デザインよりも形に対するこだわりがある。でも服自体はシンプルだからセレクトショップに陳列されると目立ちにくいんですね。だから、ブランドの世界観を見せるにはこの店のような空間が必要なんです。特に白シャツは、長丈も含め6つの型があって全部並べて見せています。選んでもらいたいんです」とシャツの説明をする門田。

そんな彼がおもむろに店の奥から持ってきたのは、複雑な切り替えのデザインや、編み込みを施した数枚のシャツ。
「前身頃のモチーフ部分は僕がミシンで縫って作っていたり。たくさんは作れないので基本はすべて一点もの。お店にはたまにしか並べてないけど、言ってもらえばお見せするし、販売もします。実は裏にまだストックがあるんです」。

店内をよく見ると、妻が担当するという手編みのニット類やラグがディスプレイされている。そう実はバックヤードにはたくさんの一点ものの手の込んだ商品が隠されている。そんなアイテムたちとは、来店して初めて、出会えるのである。

いつ訪れてもブレないベーシックアイテムと、隠された一点ものがある店。そこは、まるで行きつけの食堂や喫茶店に行く感覚でふらっと立ち寄りたくなる不思議な魅力がある

サンズリミット_店内
気持ちのいい自然光が注ぐ店内。ベンチはアメリカの映画館のヴィンテージ。

Sans Limite

ブランド名は仏語で「無制限」の意。中田商店の正面、2階の窓から見えるシャツのディスプレイが目印。
住所:東京都台東区上野4−6−10 2F|地図
TEL:03-5826-4791
営:12時〜20時
休:水曜