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深津さくらの実話怪異手帖:第十三回「ただいま」

怪談師・深津さくらが、自ら蒐集した実話の怪談を綴る。前回の「別れの季節」を読む。

text: Sakura Fukatsu

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第十三回「ただいま」

旅行サイトで見つけたのは、新幹線と宿の予約がセットになった格安プランだった。池袋駅の近くにあるレトロな外観のビジネスホテルは、仕事の現場からも徒歩3分ほどで、客室の感じも悪くはなさそうだった。

早速予約を済ませた私は、地図アプリを開いてホテルの場所をブックマークした。ついでに口コミを流し見する。「設備古すぎ」「接客悪すぎ」。評判はすこぶる悪い。まあ値段相応と思って多少のことは目をつぶろう。「断言します。ここは出ます」「幽霊を見たので星1です」。

驚いて調べてみると、そこはなんと3件もの事故物件が重なったホテルだった。怪談を仕事にしているが心霊ホテルに一人で泊まるのは正直怖かった。しかしもうキャンセルもできない。私は仕方なくその薄暗くじめじめとした部屋に泊まり、嫌だ嫌だと思いながら眠った。そして何事もなく朝を迎えた。

ほっとしながらPCをチェックすると夫からメッセージが届いていた。「早朝に玄関のドアが開く音がして、ただいまという君の暗い声が聞こえたよ。驚いて廊下に出たけど誰もいなかった」。私の夫に霊感のようなものはない。この日一体なにが起こったのか、いまだによくわからないままだ。

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