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坂本慎太郎にインタビュー。軽やかなポップスを目指した6年ぶりの新作

坂本慎太郎が6年ぶりのアルバム『物語のように(Like A Fable)』を発表する。休止していたライブの再開や制作事情など、前作からの時間を振り返る。

photo: Katsumi Omori / text: Katsumi Watanabe

鬱屈としたものを晴らすような作品を

坂本慎太郎が6年ぶりのアルバム『物語のように(Like A Fable)』を発表する。「それは違法でした」という、少々物騒なタイトルの曲で始まりながらも、全編的にキャリア史上最も軽やかな作品になっている。「重くない、聴きやすい作品にしたいと思いました。だから、なるべくギターの音がこもらないよう、最後まで気を抜かないよう音色や曲調には気をつけて。2017年からライブを再開したので、そのフィードバックが無意識のうちにあったのかもしれませんね」

前作『できれば愛を』発表から6年。やや長めのインターバルに感じるが、2017年にドイツのケルンで開催されたフェス『Week-End Festival#7』を皮切りに、USツアーや国内でのライブ活動を再開。そしてアニメーション映画『音楽』では声優を務めるなど、なにかと話題には事欠かなかった。

「2011年にソロ活動を始めてから、ライブをする気が起きなかったんですよ。バンドの頃の曲は激しい要素があったけど、ソロになってからの曲は“ライブでやって楽しいかな?”
と思っていて。でもケルンのフェスから出演のオファーが来て、一度ドイツには行ってみたかったから、引き受けることにしたんですね。日本語で歌っているのに、みんな楽しそうに踊っていたので、それで自信が持てたということはあったと思います」

2020年から、それまで書き溜めていた楽曲をまとめ、『物語のように』の制作へ。「君には時間がある」や「悲しい用事」のようなキラキラした音色のギターと、思わず心躍るようなメロディの曲が印象的だ。

「やっぱりいろいろと鬱屈したものがあったので、それを晴らすように軽やかな作品を目指しましたね。50s〜60sのアメリカンポップスとか、昔から好きでしたけど、今までそういう曲調はなかった。今回は特にそういうテイストを入れたいと思って作りました」

そんな新作はCDと配信が先行発表され、後にアナログ盤発売の予定もあるという。

「ファースト『幻とのつきあい方』の頃は円高だったので、海外でレコードのプレスをしていました。うちは自主レーベルなので、自分でハイエースを運転し、成田空港まで行って荷物をピックアップして。ただ、最近は海外のプレス工場のスケジュールがどこもいっぱいで、さらに円安だからコストが変わらないため、日本で作ることにしたんです。今、新作やリプレスの再発盤などがレコードでリリースされると、異常に高い気がするんですよ。だから、僕の新作に関しては、できるだけ高くならないようにしたいとは思います」