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斉藤壮馬の「ただいま、ゼロ年代。」第25回 The Zutons『Who Killed the Zutons?』

30代サブカル声優・斉藤壮馬が、10代のころに耽溺していたカルチャーについて偏愛的に語ります。

photo: Natsumi Kakuto(banner), Kenta Aminaka / styling: Yuuki Honda(banner) / hair&make: Chihiro Ujikawa / text: Soma Saito

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The Zutons『Who Killed the Zutons?』

斉藤壮馬

まずもって、どんな名前だよという話である。
「誰がズートンズを殺ったのか?」というタイトルもそうだし、バンド名から何から、とにかくすっとぼけた響きに、60'sの雰囲気をこれでもかというくらい再現した音像。いかにロックンロールリバイバルといえども、こんなバンドは空前絶後だった。

M1「Zuton Fever」のリフからして、ある意味ではめちゃくちゃオールドスクールで、けしてスマートで洒脱とは言いがたい。初期のザ・コーラルのような、いなたいロックンロールの雰囲気を感じて大好きだ。
バンドのコンセプトが50〜60年代の音楽やホラー映画のためそんな音になっているわけだが、今聴いてもサウンドプロデュースが非常に巧みである。

キラーチューンのM2「Pressure Point」に顕著だが、かなり音数が少なく、隙間のあるグルーヴを大切にミックスしているように感じる。
1stアルバムにして、若くきらきらした初期衝動ではなく、とにかくコンセプチュアルにひねくれていこうとする姿勢が格好いい。

そして多くの曲で、サックスがとても効果的に使われている。
アビ・ハーディング氏の、決して主張しすぎないがここぞというところで雰囲気を持っていくプレイに心を奪われ、今なおこんなふうにサックスを使った曲を書いてみたいと夢想しているほどだ。

斉藤壮馬

このアルバムもものすごくクールだが、2nd『Tired of Hanging Around』もいいアルバムで、M7「Why Won't You Give Me Your Love?」のアンセム感たるや圧倒的である。
ちなみにこのバンド、MVも毎回ユニークで、同曲はウエスト・サイド・ストーリーをオマージュしたと思われるユーモアたっぷりの仕上がりとなっている。YouTubeでまだ観られるので、ご興味のある方はぜひ。

と書きながらYouTubeを開いたら、新曲「Creeping On The Dancefloor」のMVがアップされていた。
というか、2024年に新譜が出ていた。もうほとんど活動していないものだと勝手に思っていたが、嬉しい発見だ。
グルーヴ感とメロディセンスは健在で、より洗練された音像はおそらく、初期のころよりも幅広い層にリーチするだろう。新譜もしっかり聴いておかねば。

さて、話を1stに戻そう。M2以降も独特の雰囲気をたたえたキラーチューンが目白押しのアルバムである。
シリアスなボサノバとでもいうべきM5「Havana Gang Brawl」、スパイ映画のオープニングのようなM7「Long Time Coming」など、いずれも耳に残る曲ばかりだが、ぼくがいっとう好きなのは、カントリー調で切ない名曲の、M10「Remember Me」だ。

イントロのギターの音色からして繊細で、ノスタルジックな歌詞もあいまってなんとも感傷的な気持ちになる。
この曲にはかなりはまって、コピーして何度も弾き語ったのをよく覚えている。
今回執筆にあたって久しぶりに聴いたが、あのころのことを思い出して、やっぱりセンチメンタルになった。

2000年代に突如として現れ、ゾンビ・ミュージックを奏でたバンド。
ぼくはこれからも彼らのことを、ずっと覚えているのだと思う。

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