Listen

Listen

聴く

斉藤壮馬の「ただいま、ゼロ年代。」第21回 Mando Diao『Hurricane Bar』

30代サブカル声優・斉藤壮馬が、10代のころに耽溺していたカルチャーについて偏愛的に語ります。

photo: Natsumi Kakuto(banner), Kenta Aminaka / styling: Yuuki Honda(banner) / hair&make: Shizuka Kimoto / text: Soma Saito

連載一覧へ

Mando Diao『Hurricane Bar』

声優・斉藤壮馬

ロックンロール・リバイバルの真っ只中、スウェーデンはボーレンゲから颯爽と現れ、日本で熱狂的な人気を博したバンドがいる。
マンドゥ・ディアオ。今回は彼らについて語りたい。

ロックンロールの魅力に取り憑かれた斉藤少年は、しかし他方でポップな美メロも大好きだった。そんな中出会ったのが、彼らマンドゥ・ディアオだった。
メンバー全員がビートルズ好きと公言しているだけあって、いずれの曲もロックンロールの熱ときらめきをこれでもかとたたえている。
核となるのは、まさしくジョン・レノンとポール・マッカートニーのように正反対の声質を持つツインボーカル、グスタフ・ノリアンとビヨルン・ディクスクウォット。グスタフ氏はジョンよろしく金属質な鋭いシャウトを得意とし、一方のビヨルン氏は、ポールのような深みのあるソウルフルな歌声。この二人がマイクを奪い合うように激しく入れ替わるステージングも魅力の一つだった。
思えば、The Libertinesのピート・ドハーティとカール・バラーなど、あの時代に現れたバンドには、並び立つ二つの才能を売りにしていたものがいくつかあったような気がする。ちょっとビジネスの香りを感じてしまうのは、きっとぼくが年を重ねてしまったからだろう。

声優・斉藤壮馬

マンドゥ・ディアオは1stアルバム『Bring 'em In』を引っ提げ、ロックシーンに颯爽と現れると、またたく間にブレイク。「Sheepdog」というキラーチューンを擁するこの1stも必聴だ。
ちなみに余談だが、1stのM5「The Band」(これも大名曲)は、週刊ヤングマガジンにて連載されている『1日外出録ハンチョウ』の第51話にて、キャラクターの一人、沼川の「メロディは覚えているがタイトルと歌詞がまったくわからない曲」として使われていた。ということをこの原稿を書きながら調べて知った。バンドの楽しさがすべて詰まった名曲なので、ぜひ聴いてみていただきたい。

さて、2ndアルバムの話である。1stが全体的にロックンロール色が濃い、まさに初期衝動を感じる一枚だったのに対し、この2ndでは彼らの持つポップセンスが炸裂し、より幅広い層にリーチする内容になっている。
M4「Down in the Past」の性急なビートとマッシヴな歌声、M6「Added Family」の気怠げなムードからの抜け感のあるサビ、M11「White Wall」のタイトなシャッフルとブリティッシュなコード感……何もかもがたまらない。
というか、書いていて思ったけれど、ぼくはビヨルン氏の芯が太い歌声がいっとう好きなようだ。ってM12「All My Senses」もよすぎる。サビなんてもうよすぎてスピッツだよこりゃ。

しかしなんといっても斉藤少年が撃ち抜かれたのは、M2「God Knows」なのだ。このくらいの年代のこのタイトルの曲、まさに神曲ぞろいである。
おれたちがロックンロールなんだと言わんばかりの超絶ど直球なアンセムは、イントロのドラムのタメとギターのチョーキングの時点でもう垂涎もの。グスタフ氏の切り裂くような切実なシャウトからの美しいコーラス、そしてビヨルン氏の力強く泣かせるサビ。くうっ、たまんないぜ。個人的にはめちゃくちゃベタなギターソロも大好物である。
そろそろ文字数がなくなってきたが、とにかく気になった方はサブスクなどでぜひご一聴くださいませ。

最後にさらなる余談だが、グスタフ氏の弟がやっていた、Sugarplum Fairyというバンドも、糖度満点の砂糖菓子のようにきゅんとすること間違いなしのバンドなので、こちらもおすすめしておきたい。
今夜は歪ませたギターで、いなたいフレーズをかき鳴らしたい。そんな気分になった。

連載一覧へ