古川裕也さんの自分史上最多ごはん
名クリエイターが長年愛する、「東京」を感じさせる一品とは
1985年公開の伊丹十三作品『タンポポ』で、大滝秀治が餅を喉につまらせる場面のロケ場所が、店の奥にある小上がりでした。映画をきっかけに初めて訪れた際、空いているテーブルをパスして奥が空くのを待った記憶があります。
その時の1口目がこの玉子焼き。上品でふしだらな甘さ。強く濃く、甘い。昔のお金持ちのような味がします。以来、35年間必ず12月30日に訪れて、焼き鳥の塩・たれ、蕎麦のもり・ざる、冷たいおしるこも味わうのが恒例。ここの玉子焼きを食べると、時間が外界よりゆっくり品よく流れる。ほかでは体験できない時間です。