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フュージョンとレゲエどちらがお好き?『Scratch』ザ・クルセイダーズ。バラカンが選ぶ夏のレコード Vol.32

ピーター・バラカンが選ぶ32枚のレコードストーリー。「ピーター・バラカンがオーナーのリスニングバー〈cheers pb〉で夏にかけるレコードの話を聞きました」も読む

illustration: TAIZO / text: Kaz Yuzawa

『Scratch』The Crusaders(1974年)

フュージョンとレゲエ、
どちらがお好き?

夏休みのお盆の時期になると、帰省する人たちのため僕は番組で必ず「Way Back Home」をかけることにしています。このクルセイダーズのヴァージョンをかけることもあれば、たまにジャマイカのCount Ossie & The Mystic Revelation Of Rastafariによる超ディープなレゲエ・ヴァージョンをかけたりもします。

クルセイダーズは、1960年代初頭からジャズ・クルセイダーズというオーソドックスなジャズのバンドとして活動していました。そして70年代に入ったくらいの、まだクロスオーヴァーやフュージョンといったジャンルがない時代から、全員テクサス出身である彼らのファンキーな面を強調した音楽を作るようになりました。

このアルバムは全曲インストですが、僕は、ランディ・クローフォードの「ストリート・ライフ」とかゲスト・ヴォーカルを迎えた曲ばかりを集めた編集盤『ヴォーカル・アルバム』も好きでしたね。

あるときジョー・サンプルに取材する機会があって、クルセイダーズのことを聞いたら「俺たちの音楽をジャンルで語ろうとする人が多いけど、南部の音楽なんだよ」って言ったんですよ。「南部の人間だから出せる音なんだ」って。

言われてみれば、中心メンバーの4人はテクサスはヒューストンの高校の同級生だし、クルセイダーズというバンド名は、キリスト教を想起させます。そう思って聴いてみると、たしかにゴスペルのテイストが感じられて、なるほどなと思ったことがあります。あのノリの良さも南部につながるような気がします。

さて最後にせっかくですから、たまにかけるレゲエ版の方も少し紹介しておきましょう。
Count Ossie & The Mystic Revelation Of Rastafariはラスタファリアンのバンドです。山の中で生活し、アフリカ由来の太鼓の伝統を守りながら仲間同士でジャム・セッションを繰り広げるイメージですが、彼らの「Way Back Home」ではアフリカ風のパーカションと優しくブルージーなジャズのサックスの混ざり具合が何とも言えず美しい!

The Crusaders

side B-3:「Way Back Home」

『Scratch』はLAのサンセット・ストリップにある老舗ライヴ・ハウス〈ロクシー〉で録音されたライヴ・アルバムで、ラストにメンバー紹介を兼ねて演奏されたのがこの曲。ウェイン・ヘンダスンによるその紹介がメチャかっこいい。ベイシストから紹介するのはゲスト奏者だから。