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ヴィンテージから現行の人気作家まで。木彫り熊が買える黒磯の〈ROOMS〉に潜入

なんでも「木彫り熊」が密かなブームらしい。えー、うそでしょ?床の間にある黒くテカテカしているアレだろ?わざわざ、お金を出して買うもの?そもそもどこに売ってるの?……と、聞けばキリがないほど愛のない言葉が返ってくるに違いない。そんな木彫り熊リテラシーの低いみなさんのために、古臭いイメージを払拭できる素敵なお店をご紹介。北関東の8割の木彫り熊が“生息する”(と筆者は思っている)と噂のヴィンテージファニチャーと雑貨のお店〈ROOMS〉にお邪魔してきました。

photo: Celine O'Connor / text&edit: Yu-ka Matsumoto

栃木県の黒磯といえば、観光地である那須にほど近い街で、〈アンティーク タミゼ〉や〈SHOZO〉系列のお店などが集まる近年注目のエリアだ。そんな黒磯のメインストリートに存在する〈ROOMS〉もまた、遠方からのお客さんが絶えない言わずと知れた人気店である。ただ、ここが普通の雑貨屋と違うのは、店主である川瀬真吾さんの趣味が色濃く反映された木彫り熊のコーナーがあるということだ。

オーナーの川瀬真吾さん
オーナーの川瀬真吾さん。木彫り熊の魅力に取り憑かれ、年々販売スペースを拡大中。壁には“マスク”と呼ばれる顔を彫ったお面のような壁掛けも。

コロナを機に拡大した木彫り熊コーナー

「6年ほど前に独立してこの店を引き継いだのですが、ここはもともと古道具や家具なんかを扱う店でした。4年ほど前から少しずつ木彫り熊を趣味の延長で置き始めたのですが、当時は見向きもされず……。でも、世の中がコロナになって海外へ買い付けに行けなくなったので、国内のものに注目が集まるようになって。それから思い切って本格的に木彫り熊を買い付けて並べるようになりました。個人的に好きでいくつか所有していたのがきっかけですが、ここまで広げることになるとは(笑)。お客さんからは、“なんで熊?”って言われることが多いですね」

木彫り熊コーナー

人気の現代作家・佐藤憲治氏の作品を扱う数少ないお店

北海道旭川をベースに活動する彫刻家の佐藤憲治氏。23歳のときに「さとう熊」の創業者である兄の紀昭氏に師事し、1985年に独立。木彫り熊のほかに、代表作であるフクロウや魚の彫刻を手掛けている。現在73歳を迎えたその巨匠との出会いが川瀬さんの世界を大きく広げることに。

「佐藤憲治さんと巡り合うきっかけは、札幌にある『遊木民』という木彫りのお店。そこで佐藤さんの熊に出会って衝撃を受けました。70歳を超えた方がこんなにもユーモア溢れる作品を生み出すなんて想像もつかなくて。それで連絡先を伺って電話してみたのが始まりです。その後、旭川の工房まで会いに行ってみたのですが、最初売ってくれなくて(笑)。わざわざ旭川まで来たのに……って思いましたが、めげずに何度か足を運んでいるうちに、じゃあやってみる?って言ってくださって。それで扱わせていただくことになったんです」

「この道50年の大ベテランにもかかわらず意欲的に作品を生み続けているパワフルな方です。この店で、木彫りの実演をしていただいたり、『木彫り人生50周年展』など、イベントもいろいろと企画させてもらっています。佐藤さんの作品は、すごくほっこりするんですよね。シャケの上に乗ってスライドする姿を彫った“シャケボード”など、人柄が表れたユニークな木彫りが魅力です」

北海道八雲町出身のレジェンド作家・引間二郎氏の毛彫の這い熊
日本の木彫り熊発祥の地、北海道八雲町出身のレジェンド作家・引間二郎氏の毛彫りの這い熊。こんなレアな作品も展示・販売されている。

断っておくが、ここは木彫り熊の店ではありません。ヨーロッパやインドなど各地から集められた一点物のヴィンテージ家具や古道具を扱うとっても素敵なショップです。そんな店の傍に、ひっそりと、いや、堂々と置かれている熊の置物を見に一度訪れてみてはいかがだろうか?店主、そして筆者同様、きっとその魅力に取り憑かれるに違いない。“熊出没注意”です。