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ラブコメ好き必見!山崎まどか×月永理絵が語る、NYが舞台の恋愛映画の楽しみ方

秋のセントラルパークや冬のミッドタウンが映るだけで気分上々!作品への評価が少し甘くなってしまうという山崎まどかさん。一方、NYに限らず、ラブコメというジャンルが大好きで追い続けている月永理絵さん。NYが舞台の恋愛映画だからこその楽しみとは?

photo: Keiko Nakajima / text: Asuka Ochi / cooperation: Magnolia Bakery Japan

月永理絵

ケーリー・グラントとデボラ・カー主演の『めぐり逢い』(*1)が好きなんです。船で出会った2人がエンパイア・ステート・ビルの展望台で待ち合わせるんですが、デボラ・カーが途中で車の事故に遭って再会できなくなってしまう。そこに行けなかった理由を「私が悪いの、天国に一番近い場所、あなたがいるビルの上ばかり見上げて歩いていたから」って泣きながら言うんですよ。

山崎まどか

そこだけ観ても泣けますね。そのオマージュ作品の『めぐり逢えたら』では、『めぐり逢い』のことを話しながら女同士で泣くシーンが、とにかく素晴らしい!『恋人たちの予感』(*2)や『ユー・ガット・メール』を作ったNYのラブコメの女王、ノーラ・エフロンの作品ですね。

月永

『恋人たちの予感』、いいですよね。公園で散歩してレストランで食事をしたり、リアルなNYの空気を感じられる気がします。

山崎

メトロポリタン美術館のシーンでは、大きなガラス張りの窓からセントラルパークの紅葉が見える。絵になるNYを知っている人ですね。映画を観て〈カッツ・デリカテッセン〉に行った人も大勢いるはず。ベタですが『マンハッタン』も、ラプソディ・イン・ブルーをバックにNYの街が映る冒頭を観るだけで大満足なんです!夜中にセントラルパークで馬車に乗るシーンも憧れですね。

『恋人たちの予感』で社会現象にもなった〈カッツ・デリカテッセン〉。今もメグ・ライアンの椅子は特等席。

月永

私はNYに行ったことがないんですが、昔の書き割りのようなニセモノっぽい風景も好きです。

山崎

ドリス・デイとロック・ハドソンの『夜を楽しく』(*3)など、書き割り全盛期の1950〜60年代の作品は私も好きです。当時の人工的なラブコメのパロディとして作られた2003年の『恋は邪魔者』も最高。マンハッタン島を空撮した冒頭、背景をスクリーンで合成した車のシーンと、昔のお約束が全部入っています。

月永

忠実な再現が面白いですね。

山崎

スプリット・スクリーンの上段でユアン・マクレガーが腕立て伏せ、下段では腹ばいのレネー・ゼルウィガーが「YES!YES!」って叫んでいたり(笑)。映画の検閲が厳しかった時代の表現の工夫まで再現されていました。

『恋は邪魔者』には、豪邸の窓を開けると摩天楼!のお約束も。もちろん、後ろの風景は作りもの。

マンハッタンの外へ向かう、リアルなNYの恋愛事情

月永

NYの恋愛映画では何をして稼いでいるのか、仕事やお金のことも大事な背景として描かれますね。住むエリアによって階級や文化圏の違いも顕著に表れますし。

山崎

女子が働きに来る街だというのと、狭い都市なのにそれぞれ「自分はココ!」というレペゼン地域みたいなものがあるんですよね。いわゆるお金持ちが住むのがアッパーイースト・サイドで、彼らは五番街から南は何があるかわからない滝のような場所だと思っている。

一方でアッパーウエストは裕福な知的層のエリア、ダウンタウンの人にはカルチャーシーンを牽引してきた自負がある。ブルックリン内でも細分化されていますね。映画に実在の店が登場することも多いです。『恋とニュースのつくり方』のハリソン・フォードがジャーナリストや文化人が根城にしていたミッドタウンの〈エレインズ〉(*4)にいるというだけで、黄金期を築いたキャスターということまでわかってしまう。

月永

最近はブルックリンなどマンハッタンの外を舞台に新しいNYを描いた映画も多くなりました。

山崎

厳密には恋愛映画とはいえませんが、ノーラ・エフロンの遺作となった『ジュリー&ジュリア』は、クイーンズという外れを舞台にしたのが新鮮だった。最後まで、NYの時代感、若者がそういうエリアに移っていく感じもわかって撮っていた作家だと思います。

月永

今はブルックリンでさえ家賃が高いという住宅事情もあり、誰かと同居して、そこで恋のゴタゴタが生まれる、そういうルームシェアものもリアルな気がします。

山崎

『遠距離恋愛 彼女の決断』でも、貧乏なカップルのいろいろが同居人に筒抜け状態でしたね。

月永

隣の部屋からおせっかいでムーディな音楽がかかったり。

山崎

『フランシス・ハ』(*5)では、ルームメイトの1人が夜連れ込んだ女の子と同居人と翌朝、一緒に朝ご飯を食べるんですが、すごくNYっぽい事情だな、と思いました。ブラウンストーンの素敵な家を舞台にキラキラしていたマンハッタンのラブコメは、不況期の今、そういう方向へシフトしていて、貧乏だけど、でも素敵で。

月永

カップルと友達の距離感も、より近くなっている気がします。

山崎

ルームシェアやホームパーティで恋人を巻き込むんですよね。あそこは別れた、くっついたって事情を周囲が知っている感じも面白い。街自体も狭いから、別れた恋人同士が遇然会う確率も高くて、『ラブストーリーズ コナーの涙/エリナーの愛情』(*6)でも、2人ともイーストビレッジにいたら、そりゃ、会っちゃいますよね。

月永

『ラブストーリーズ』もそうですが、男性が「伝えなきゃ!」って走りだす映画って傑作なんですよね。『ラブ IN ニューヨーク』(*7)も男が走って終わるんですが、あれにも女の子が朝ご飯を作るシーンがありましたね。

山崎

だいたいお約束で卵料理ですよね。「男ってスクランブルが好きよね」、なんて言いながらね。