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ローランドがアニメ映画から学んだこと。ジブリの名セリフに歌舞伎町の人間模様を見た

一流の男は、一流のアニメを知っている──。カリスマホストでありながらオタクな一面も持つROLANDさんは、その審美眼でどんな作品を選び、どう観ているのだろうか。実際に聞いてみた。

photo: Koh Akazawa / text: Masae Wako

ジブリの名セリフに
歌舞伎町の人間模様を見ました

「名を奪われると、帰り道がわからなくなるんだよ」

これは、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』に出てくるハクのセリフ。今改めて聞くこの言葉が、なんだかリアルに響くとROLANDさんは言う。

「例えば誰かがホストになって源氏名がつくと、本名で呼ばれることが減ってくる。そうやって過ごすうちに歌舞伎町の価値観に染まり切ってしまい、元の世界への帰り方もわからなくなる。ハクのセリフみたいなことが、僕たちの業界では確かにあるんです」

カリスマホストとしてのみならず、アニメオタクとしても知られるROLANDさんが『千と千尋~』を初めて観たのは小学3年生の時。当時はぼんやり流れていったセリフやキャラクターも、大人になって観直したとたん、全く違う姿で脳内に飛び込んできた。

「ただのお化けだと思っていたカオナシが、パパ活をしてる人に見えてきたんです。他人の愛や気持ちをお金で買おうとする人たちと重なったんですよね。これって、人間の尊厳や愛情はどんなにお金を積んでも奪えないことを、世の中に問題提起しているのかなとも思いました。深い。深いなあ。何回でも観ることをおすすめしたい映画です」

と、アニメ愛あふれるROLANDさんだが、昔はアニメを遠ざけていたのだとか。理由はギタリストの父。影山ヒロノブらアニソン界の大御所とも共演してきたレジェンドだ。

「10代の頃は同じ男としての反抗心もあったんでしょうね。それが24歳の時に父のライブを観て、やっぱりすごくカッコいいな!って。それからはアニメファン一直線。父のおかげでアニメの素晴らしさを知ることができたと思うたび、心の中で感謝しています」

映画『千と千尋の神隠し』
©2001 Studio Ghibli・NDDTM

手紙をめぐる名作で
レトロな世界観に浸りたい

「僕が何回も観たくなるのは、今の自分に足りないものを補給してくれるアニメ映画。例えばホストクラブでは親近感が大切なので、少し砕けた接客をするんですね。でも、油断すると品がなくなってしまう。そういう時には『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』です。由緒正しき私立学校!品格ある制服姿!男子はみな王子様のよう!ああいうふうにならねばと思いながら、品を補います」

そして、SNSやLINEでデジタル疲れした時は、京都アニメーションの名作『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を観て、アナログの優しい手触りを補給する。作品の主題は手紙で、主人公は代筆屋の少女。衣装にもインテリアにも風景にも、丁寧で繊細な作画によるクラシカルな美しさが漂う。

「指一本で送れるインスタントなコミュニケーションが普通になった今ですが、僕はこのレトロな世界観が好き」

観るたびにそのことを再認識できるし、このアニメと出会ってから、自分でも手紙を書くようになったそうだ。

「母の誕生日など節目の時は、手書きの手紙を送ります。便箋や封筒を吟味して、蝋を使うシーリングスタンプで封をする。アニメの中で手紙の代筆を頼む人たちもそうだったのでしょうが、手紙って、書いている(書いてもらっている)間ずっと、相手のことを考え続けますよね。それはとても幸せで贅沢なことだと思うんです」

もともと2018年放映のテレビアニメ作品が好きで、観直すたびに「どこに感情を持っていったらいいのかわからないほど号泣する」ガチファン。20年の劇場版は、映画館で観賞した。

「観終わって泣いていたら、隣の席の方がハンカチを貸してくれて、その後めちゃめちゃ仲良くなったんです。アニメ映画は1人で来られる方も多いし、共通の趣味があると確約されているわけですから、隣の人に声をかけて感想を言い合うのも楽しいと思う。誰かと話すことで見え方が変わったり、また観たくなるかもしれないですしね」

ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会 Blu-ray&DVD発売中。
ホスト、実業家・ROLAND
撮影は〈アニメイト新宿〉。スポーツアニメも好きなROLANDさん。バレーボールを題材にした『ハイキュー!』コーナーが気になるもよう。