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忘れられない食と出会うご飯宿、滋賀〈湖里庵〉。奥琵琶湖のほとりで、土地の恵みを味わう

食事をゆっくり味わい、余韻に浸りつつ眠る。“泊まれる”レストランが話題です。土地を表現する料理を味わうなら、皿の背景となる自然に身を浸す時間もセットで。時間をかけ、食を体験する旅へ。

photo: Kunihiro Fukumori / text: Ai Sakamoto

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湖里庵(滋賀/高島)

鮒寿司懐石:
奥琵琶湖のほとりで、滋味深き土地の恵みを味わう至福

天明4(1784)年創業の鮒寿司の老舗〈魚治〉が営む料理旅館。店名は常連だった作家・遠藤周作が、自身の雅号「狐狸庵山人」から名づけた。

鮒寿司とは、琵琶湖の固有種であるニゴロブナを塩漬けした後、米飯とともに自然発酵させる「なれ寿司」。通常、数ヵ月で食べられるようになるが、〈魚治〉では2年近く熟成させる。「その間、発酵に欠かせない乳酸菌のお世話をするのが私の役目です」。7代目当主であり、料理人でもある左嵜謙祐さんがこう話す。

鮒寿し懐石は全10品。天ぷらや茶漬けといった鮒寿司を使ったメニューに加え、コイやアユ、ビワマスなど琵琶湖でとれた“湖魚”を味わえる。特に子持ちのフナが揚がる4月頃は、塩ゆでした魚卵とともに食す刺し身が美味。澄んだ湖水で育ったフナの身はコリコリとして、噛むほどに甘やかだ。

2018年の台風被害による全壊を乗り越えて、2021年春再建した〈湖里庵〉の特等席は、湖と左嵜さんの仕事の両方を間近に眺められるカウンター。「景色ごと、琵琶湖の恵みを楽しんでほしいですね」

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