家族がその時々に必要とする空間を、
自分の力と速度でつくり続けながら、住む。
Playmountainの家具製作などを初期より手がけ、現在は、インテリア設計や、家具のデザイン・製作などを行う川畑健一郎さん。彼が実家のある鹿児島に工房を構えたのは18年前。父親と共に鉄骨を組み上げてつくった武骨なその工房棟が、すべての始まりだ。
「7、8年ほどして工房だけでは手狭になってきたので、ショールームを兼ねたアトリエ棟をもう一つ、建てることにしたんです」
天井の高い鉄骨造、ガルバリウム鋼板の外壁といった基本的なつくりはそれまでの工房棟と同じ。さらにここに住むことを決め、住空間を足していった。
「どうせなら住んでしまおうかと。鉄骨造の中にさらに木造で必要な空間をつくっていくイメージです。まずは2階にプライベートスペースをつくり、リビングからはデッキテラスを張り出しました。その後も、必要に応じてスペースや機能を足しながら住んできたという感じです」
例えばこの家は、元は住居として考えていなかったために断熱層をとっておらず、冬場は家中がかなり冷え込む。それに気がついてからは、1階に薪ストーブを設え、その周辺にデスクやデイベッドを置いて火の番ができる書斎とした。あるいは息子たちが成長したタイミングで、アトリエの吹き抜け部分にロフト状の個室をつくったり、本格的にクライミングに取り組み始めた息子のために、クライミングルームをつくったり、はたまた、いつでも家族で食事が楽しめるようにデッキテラスやその下の屋外キッチンを設けたり……。
設備や電気工事など、大掛かりなところではプロの手を借りつつ、基本的には川畑さんが考え、自身の手を動かして、“つくり続け”ているという。H形鋼や鉄パイプ、工事現場の足場板などを多用したり、古道具屋で見つけたものを組み合わせたり。費用をかけすぎることなく、知恵と技術でつくり上げてきた住空間だ。
「常にそこに住む家族優先。暮らしていくなかの不便や不自由を、一つずつ解消してきただけです」
成長を続けるこの家に、次にどんな変化が待つのだろうか。