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歴史的建築に泊まる。文化遺産のリノベーションホテル8選 〜後編〜

リゾートの醍醐味は、そこへ一歩足を踏み入れた瞬間に“いかに非日常の世界へ飛べるか”だ。優れたリゾートが“楽園”と称されるのは、計算し尽くされた眺望や空間、洗練された食事と酒、ホスピタリティに満ちた接客、そのすべてがあるから。この記事では「Renovation」をキーワードにラグジュアリーリゾートを紹介する。前編はこちら

photo: Madoka Sakamoto, Mai Kise / text: Yoko Fujimori, Hiroko Yabuki, Hikari Torisawa, Tomoko Oishi, Akiko Yoshikawa, Mamiko Izutsu / edit: Yoko Fujimori

Masseria Trapanà(イタリア/プーリア)

南国の農園で、何もしない贅沢を味わう

南イタリアの小さな町レッチェ郊外に立つ、16世紀のマッセリアを2年の歳月をかけリノベーションした小さなブティックホテル。「マッセリア」とは、16〜17世紀にプーリア州に多く発展した農園を指す。

オリーブの木が生い茂る600,000m2の広大な敷地には、9つのプライベートな庭付きのゲストルームが点在する。この地の特産である蜂蜜色のレッチェ石が使われた建築はそのままに、内装は各部屋で異なるインテリアを採用。オーナーであるロブ・ポッター・サンダーズのバリとタイでの豊富な滞在経験から、各庭にはアウトドアバスタブも設置されている。

Pulitzer Amsterdam(オランダ/アムステルダム)

オランダ黄金時代の建造物が極上ホテルに

ピューリッツァー賞創設者の孫であるピーター・ピューリッツァーが1960年より開業した〈ピューリッツァー アムステルダム〉。ユネスコ文化遺産指定を受けた運河沿いに立つ、400年以上もの歴史を持つ25のカナルハウスを使用したホテルは、2015年より全面改修され、5ツ星ホテルとして再び門戸を開いた。

モダンな客室はどれも居心地抜群だが、一味違う体験を求めるなら、その昔カナルハウスに住んでいたアーティスト、作曲家、アンティークコレクターらにオマージュを捧げたインテリアが取り入れられている、コレクターズスイートがおすすめだ。

GRAN HOTEL MIRAMAR(スペイン/マラガ)

王室にも愛された由緒あるホテルが復活

地中海の波に映える白く美しい姿は20世紀前半に活躍した建築家フェルナンド・ゲレロ・ストラカンによる設計。1926年に国王の命によりホテルとして開業し、ヨーロッパ各地から貴族や芸術家たちが集った歴史ある建造物だ。

スペイン内戦時は病院となり、その後、時にはホテルとして、時には法を司(つかさど)る場所として、アンダルシア地方の歴史を見守ってきたこの建物が、ホテルとして復活。9,000m2もの庭園に囲まれたクラシックな建築は、マラガ湾を望む海岸線沿い。ビーチまで徒歩1分、美術館や博物館などの観光名所も徒歩圏内という立地も魅力的だ。

ALILA FORT Bishangarh(インド/ジャイプール)

高台の要塞から、ラジャスタンを一望する

230年前に建てられた要塞に大規模リノベーションを施した〈アリラ フォート ビシャンガ〉がついに完成する。ビシャンガ村の丘の上に立つ18世紀の遺跡を再生させたのは、シンガポールの〈アリラホテルズ&リゾーツ〉。

このエリアはイギリス植民地時代にも自治権を保持していたため、伝統様式を色濃く残したジャイプール・ガラナ建築様式が発達した。繊細に造り込まれた天井や壁や床、曲線と直線を組み合わせた窓枠の美しい意匠を受け継ぎながら、最大限に周辺環境へ配慮して造られた、温かみのある空間。スパイスを多用した料理も必食だ。