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歴史的建築に泊まる。文化遺産のリノベーションホテル8選 〜前編〜

リゾートの醍醐味は、そこへ一歩足を踏み入れた瞬間に“いかに非日常の世界へ飛べるか”だ。優れたリゾートが“楽園”と称されるのは、計算し尽くされた眺望や空間、洗練された食事と酒、ホスピタリティに満ちた接客、そのすべてがあるから。この記事では「Renovation」をキーワードにラグジュアリーリゾートを紹介する。

photo: Madoka Sakamoto, Mai Kise / text: Yoko Fujimori, Hiroko Yabuki, Hikari Torisawa, Tomoko Oishi, Akiko Yoshikawa, Mamiko Izutsu / edit: Yoko Fujimori

Villa René Lalique(フランス/アルザス)

芸術家の館でアールデコ時代に思いを馳せる

高級クリスタルブランド〈ラリック〉の創始者ルネ・ラリックが、アルザス滞在時の自宅としてヴィラを建てたのが1920年。その邸宅がコロンバージュスタイルの鎧戸(よろいど)に至るまで当時のままに再生され、モダンで豪奢なホテルに変貌した。

わずか6室のスイートは、アールデコ調のインテリアやクリスタル、歴史を刻んだ写真で飾られ、ラリック家へ招かれたような気分に。ラウンジバーではラリック社のグラスや、ウイスキーの名門マッカラン社、プレミアムテキーラで有名なパトロン社らと共同制作したカラフェでサーブされるカクテルを楽しむことも可能だ。

Chablé Resort & Spa(メキシコ/ユカタン半島)

神秘の文化が生まれた地で、至福の癒やしを

かつてマヤ文明が栄えたユカタン半島の森奥深くに誕生した、世界のスパマニアをも魅了するプライベートリトリート。19世紀の大農場跡を利用したリゾートは、750エーカーの広大な敷地内に40のヴィラのみという贅沢さ。

当時使われていたままの壁をヴィラ建物にも使用しており、現代的な印象の中にもマヤ建築の伝統を垣間見ることができる。スパトリートメントは、古くから聖なる場所とされてきた“セノーテ”(自然に陥没してできた深い井戸)脇で、この地に伝わる伝統的手法と素材を取り入れて行われる、ほかでは体験できないユニークな内容だ。

CAPELLA SHANGHAI, JIAN YE LI(中国/上海)

上海を象徴する文化遺産が都市型リゾートに

1860年代に登場した中洋折衷の長屋式建築様式「石庫門」。国の文化遺産に指定されたこの石庫門の建築群が、初の全室ヴィラタイプの都市型リゾートとして登場する。新たな命を吹き込んだのは〈カペラ・ホテルズ&リゾーツ〉。

英国統治時代のタナメラ(コロニアル様式の建築)をエントランス棟として蘇らせたこのブランドの代表作〈カペラ・シンガポール〉が証明するように、歴史的建造物を上質なリゾートに昇華させるのは得意分野だ。

石庫門の象徴的な赤レンガの外壁や半円を描いた石造り門、そこに設置した黒漆の扉などに緻密な修復がなされている。多くの高級リゾートを手がけた著名デザイナー、ジャヤ・イブラヒム氏が内装を担当したことも話題。さらに、ピエール・ガニェールの愛弟子ロマン・シャペルがシェフを務める〈コントワール・ピエール・ガニェール〉がメインダイニングとして出店し、ディナーだけでなく朝食からアフタヌーンティーまで提供するのも期待が高まる。

Soho Farmhouse(イギリス/チッピングノートン)

緑豊かな農場がモダンな大人の社交場に変身

ニック・ジョーンズが運営する会員制クラブ〈ソーホー ハウス〉の15番目となるホテル。ニック、そしてデザインディレクターのヴィッキー・チャールズが18世紀から残る農園を全面改修し、当時の面影を残しつつもコンテンポラリーな場所へと生まれ変わらせた。

コッツウォルズ地方特有であるレンガ造りの壁が美しいメインバーンでは、英国ならではのブレックファストが一日中オーダー可能だ。〈ソーホー ハウス〉のために生まれたスキンケアブランド〈カウシェッド〉を使用するスパは、会員と滞在客のみのエクスクルーシブなものとなっている。