娘の遺体を発見し
母親が泣き崩れるとき
遺体を発見する、まさにその瞬間を映像に捉えるなんて狙ってできることじゃありません。だからまず真っ先に思い浮かんだのはこのシーンでした。
もちろん、ただ撮れているだけ、というわけじゃなくて、パニック状態の母親と、その母親に構ってよと言わんばかりに無邪気に近寄る犬の様子の対比がとても印象的で。
ここには人の死に接したときに現れる本物の感情があるし、そんなときに犬が心情を察して慰めてくれるようなことは起きないんだなあと。床に置いたカメラが玄関から奥の部屋に続く廊下を見上げる構図も、どこまで意図したものかはわかりませんが非常に効果的でした。

それに映像に携わる人間としては、これほど強烈な一部始終をどういう流れで見せるかがとても難しいところだと思いました。この素材自体、林由美香さんの死後、一時的に世に出さないことが遺族との話し合いで決められたように、誰にとっても気持ちがいいものとは言えません。
このシーンをどう見せるか?というのが本作の主題でもあるけれど、僕はなるべく自らを被写体にしたくないし、その顚末を描くような編集にもしないと思う……。自分ならどうするかを考えさせられた作品でもあります。
