紋繍遊泳場の入口付近にある
トロピカルジオラマ金正日に
従業員が一同拝礼する場面
朝鮮への旅行では、事前に行きたい場所を自己申告します。2019年に旅行したとき、作中に出てくるウォーターパーク〈紋繍遊泳場〉をリクエストし、実際に行ってきました。
来場している市民はみな浮き輪片手に本気でウキウキ状態……なんですが、入ってすぐの場所に南国風ビーチを背景にアイドルスマイルを浮かべる金正日前総書記の超巨大フィギュアがあり、そこを通過するときだけは、超真剣な顔で前総書記に拝礼をします。
浮かれた空気と総天然色の金正日像、それと圧倒的感謝が漂う市民の深々とした拝礼のギャップがすさまじく、「絶対に笑ってはいけない北朝鮮」が始まったかと思いました。
実は将軍様のトロピカルジオラマは写真撮影が禁止で、私も泣く泣く撮影を諦めたのですが、帰国後この作品を観ていたらまさかの再会!撮ってくれた監督に、感謝で心が震えました。
北朝鮮で外国人と接する人たちは、外国から見た北朝鮮と、自分たちの本来の姿、2つの視点を理解したうえで、“北朝鮮の市民”を表現するのに長けている印象がありました。この作品に登場するのは、まさにそういう人々。旅行者が見ることのできる現実を追体験するのに、とてもいい作品だと思います。