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ドキュメンタリー好き・武田一義(漫画家)、忘れられないあのシーン。『Future is MINE −アイヌ、私の声−』

ドキュメンタリー好き、漫画家・武田一義さんが「忘れられない、あのシーン」について語ります。

Illstration: Ryo Ishibashi / Text: Emi Fukushima

歌い手・萱野りえが
アイヌの伝統的な歌唱法で
自らの想いを唄うとき

北海道で生まれ育った僕にとって「アイヌ」という言葉は身近です。でも、「アイヌの人々」は決して身近ではないんです。今思えば、周囲にいなかったのではなく、ただ名乗っていなかっただけなのかもしれない。アイヌに生まれた萱野りえさんの葛藤を聞いていると、そう思わされます。

『Future is MINE‒アイヌ、私の声‒』
©3Minute inc.

文化を未来に継ぐ術を模索するりえさんは、この作品でアメリカの先住民族と交流し気づきを得るのですが、そこで感じた決意をアイヌ語で歌に乗せるのがこのシーン。

美しくどこか壮大なイメージをもたらす、声帯を絞る伝統的な歌唱法に心を掴まれるだけでなく、素直な心情をただそのまま綴った詞を、その時、思ったままのメロディに即興的に乗せていく。その素直さが、心に真っすぐ刺さります。

アイヌの人は、生まれたときからある意味で生き方を定義づけられていると思います。少数民族であるがゆえの苦労も絶えないでしょうが、自らのルーツを知るよしもない自分にとっては、何か先祖からの道しるべをもらっているようで羨ましくもあるんです。

ドキュメンタリーの醍醐味は、自分と違う人生に触れられること。漫画家としての自分の人間観に、少なからず影響を与えてくれていると思います。

『Future is MINE‒アイヌ、私の声‒』イメージイラスト