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ドキュメンタリー好き・伊藤亜紗、忘れられないあのシーン。『ターニング・ポイント: 9・11と対テロ戦争』

ドキュメンタリー好き、美学者・伊藤亜紗さんが「忘れられない、あのシーン」について語ります。

Illstration: Ryo Ishibashi / Text: Ryota Mukai

旅客機が激突した
ワールドトレードセンターが
煙を上げて崩落するとき

9.11のテロはショッキングだったけれど、この前後の経緯まではちゃんと整理して理解し切れていませんでした。なかでも衝撃的だったのは、アフガニスタンで活動したアメリカ軍兵士らのインタビューです。心的外傷後ストレス障害こと、PTSDの本当の苦しみを感じて。

というのもこれまでは、強烈なショック体験を経て心に傷を負うこと、だと理解していたのですが、実際にはより複雑で、自我を破壊してしまうほどの精神疾患なのだとわかったんです。ある兵士は、アメリカの自由とは「偽る自由」だと悟ったと語っています。

『ターニング・ポイント:9・11と対テロ戦争』

大量破壊兵器がある、というひどい作り話も受け入れなければならない極限の状態に置かれて、心の拠りどころにしていた生まれ育った国に幻滅すると同時に、自身のアイデンティティすら失ってしまったんです。
また別の兵士はこのアフガン戦争を、僕個人の戦争、「my war」と呼んでいます。

目的も戦略もない状況では、そこで起こるあらゆることを自分のせいだと思ってしまう。そのために何事も自身を責めてしまうんです。これらのインタビューは、合間に戦地の映像を交えながら進むからリアリティ十分。アメリカを批判する明確な視点と説得力に圧倒されました。

『ターニング・ポイント:9・11と対テロ戦争』イメージイラスト