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ドキュメンタリー好き・大島新、忘れられないあのシーン。『ホームレス理事長 ~退学球児再生計画~』

ドキュメンタリー好き、ドキュメンタリー監督・大島新さんが「忘れられない、あのシーン」について語ります。

Illstration: Ryo Ishibashi / Text: Katsumi Watanabe

借金の返済日に金策が尽きた理事長が
監督に土下座して
借金を申し込んだとき

まずこの理事長が非常に面白い人物なんですけど、資金繰りに困った彼が、土下座して監督に借金を申し込むシーンで完全にノックアウトされました。
突然のことなので、それまで理事長を撮っていたカメラマンが「ここは監督に振るべきなのか?」と困惑している……その心の動きがそのまま映像に表れているのがまず面白い。

『ホームレス理事長~退学球児再生計画~』
©東海テレビ放送

もう一つ、「自分がこれをやられたらどうするだろう?」と、ドキュメンタリーの作り手として考えさせられもしました。結局、監督はお金を貸さないんです。でもそれが正解かどうかはわからない。

ピュリツァー賞を取った「ハゲワシと少女」という有名な写真がありますが、少女を助けなかったことを世界中から非難され、受賞後にそのカメラマンは自殺しています。「撮影対象を助けるべきなのか?」というのは、作り手が常に抱える「答えのない問い」なんです。

「作り手が完璧に良い人だとドキュメンタリーは作れない」と感じることは時々あります。でも「ドキュメンタリーを作っている人間は悪人だ」と開き直るのも嫌なんです。その両方の間で揺れていたい。このシーンはその問いと揺れが表れた名場面だと思います。

『ホームレス理事長~退学球児再生計画~』イメージイラスト