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デザイナー皆川明とラジオ。雑音は記憶のスイッチ

〈ミナ ペルホネン〉を手がける皆川明がラジオに出会ったのは小学生の頃。ラジオとの原風景から今に至るまでを聞いた。

Photo: Yu Inohara / Text: Neo Iida, Masae Wako, Keisuke Kagiwada / Styling: Yudai Ichinosawa / Hair&make: Yuka Noguchi / Cooperation: Kanda Jumbo

私とラジオ。

この小さなラジオは2019年のファッションショーで使ったもの。客席に1つずつ置き、あえて雑音混じりの音楽を流しました。

ランウェイを観ている最中、自分の手の中から聞こえてくるプツプツ途切れる音楽に、ふと夕食どきの家族の会話や実家の天井の模様を思い出す。そういう不完全さの中にこそ日常の美しさがあると思ったんです。ラジオの雑音は記憶のスイッチなのでしょう。

僕は今も、周波数をチューニングして自分で電波を拾いに行く感覚がとても好きです。原点は小学生の頃。学習雑誌の年間購読特典で手に入れた組み立て式のラジオで、『JET STREAM』を聴いていました。独立後、デザイナーと並行して八王子の魚市場で働いていた時は、毎朝4時に出社して雪国の様子や演歌が流れる番組を。

「今頃、長距離トラックの運転手さんは、故郷を思い出しながら眠気と闘ってるのかな」って、知らない誰かが知らない場所で自分と同じように聴いて拠りどころにしていることを、声だけのラジオを通じて実感できる時間が好きでした。今なら『GOOD NEIGHBORS』。いろんな人と未知の世界を共有する感覚というか、井戸端会議をこっそり覗かせてもらっているような気分が楽しいんです。

自分で番組を持つとしたら、夜見た夢をゲストの方と語り合う明け方のラジオ。リスナーはそれを聴きながら自分が見た夢にも思いを馳せるんです。番組名は『YOU ME“夢”で逢えたら』かな。

MY FAVORITE:GOOD NEIGHBORS/J-WAVE(東京)/毎週月〜木曜日 13:00~16:30