スマホを触っているとたびたび出会うゲームアプリの広告。特に知恵とひらめきがものを言うパズル系のゲームは、つい手を止めて考えてしまう人も多いはず。
とはいえ、「パズル アプリ」「クイズ アプリ」と検索しても、出てくるアプリは膨大で、本当に面白いものにたどり着くのは難しい。広告からゲームに飛ぶと、全くパズルと関係ないアクションゲームだった、なんてこともある。
日々こうしたアプリを制作し、研究しているクリエイターなら、本当に面白いものを知っているのではないか。そう考えて訪ねたのが、ウェブメディア、YouTube、テレビ、書籍など、クイズにまつわるあらゆるコンテンツを世に送り出すQuizKnockチームだ。
QuizKnockを運営しているのは株式会社batonだ。2019年にゲームアプリの開発チームが本格的に発足し、現在のリリースは15タイトル。このチームに所属し、主に企画立案を手がける灼熱亭火焔さんと、チームのマネジメントに携わる穂浪勇利さんが取材に応じてくれた。
まずは、株式会社batonがリリースしたアプリの中から、特におすすめしたい2タイトルを教えてくれた。
wallprime
「『wallprime』は、私が初めて作ったアプリです。次から次へと表れる数字を素因数分解してスコアを競います。元々は、我々株式会社batonのビジョンである『遊ぶように学ぶ世界』を体現するべく、学校の科目や単元からアイデアを考える中で生まれたものです。
初めてのアプリということもあって、製品のレベルにするまでは苦労しましたね。例えば、難しさの調整。簡単すぎると飽きてしまうし、難しすぎると楽しくない。分解する数を大きくしたり、手持ちの素数の数を増やしたりして、難易度の幅を増やしました。
あとは、楽しめるかどうか?単純に素因数分解するだけでは『学び』だけで『遊び』がない。制限時間を設けたり、スコア制にしたり、素因数分解で壁を壊していくアクションの要素を取り入れて、楽しそうな表現にできたと思います」(灼熱亭さん)
ダイタイライン
「『ダイタイライン』は2023年にリリースした新作です。「平成31年は何日間だった?」などの数字が答えとなるクイズに、その名の通り『だいたい』で答えて、正解との差が小さいほどスコアが高くなるというもの。ユニークかつ知識がなくても参加できるクイズアプリを作りたいと思って考えました。最大8人のオンライン対戦モードもあります。
クイズはリリースする段階で、800問ほど制作しました。今では1400問ほどになっています。作問をする専門のチームの力を借りて作ったものです。アイデアが面白くても、いいクイズが作りづらいこともあるんです。その点、『ダイタイライン』はうまく制作ができました」(灼熱亭さん)
続いて、株式会社batonが制作したもの以外からも、おすすめのアプリを聞いた。
black
ベルギーのインディゲーム作家、Bart Bonteさんが2018年に発表したパズルアプリ。プレイヤーは50問のミニゲームに挑戦するが、クリアする方法は実際にアプリを触って感覚的につかむしかないという新感覚のパズルだ。それだけに、解けたときの快感もすごい。
「なかなか言葉では説明しにくいパズルですが(笑)、シンプルだけど面白くて、デザインが美しい。同様のシリーズで『pink』『yellow』などもあります」(灼熱亭さん)
Human Resource Machine
2015年にアメリカのインディゲーム制作会社〈Tomorrow Corporation〉がリリース。アプリのほか、PCやNintendo Switchでもプレイできる人気タイトルだ。
「プログラミングの論理に則ったパズルゲームです。専門用語は一切不要で、まさに『遊ぶように学ぶ』ゲームでもあります。しかもプログラミングの対象は人間。効果的なプログラミングで能率的な人間をつくろうという、なかなかブラックな皮肉が効いた作品でもあります」(穂浪さん)
Baba Is You
2019年にフィンランドのインディゲーム開発者が制作したゲームで、アプリのほか、PC、Nintendo Switchでもプレイできる。2023年11月のBRUTUS本誌のゲーム特集でも紹介。キャラクターを動かしてゴールを目指すが、障害物や壁の扱いなどのルール自体を上手く変えながら進めていくのが特徴だ。
「プレイヤー自身がルールです。駒を動かすことでルールが書き換わっていきます。これも言葉では説明が難しいですが(笑)、でもこれこそが、必ずしも言葉を必要としないパズルならではの魅力でもあります。画面上にすべての要素がきれいにまとまっているのも素晴らしい」(灼熱亭さん)
どのアプリも、シンプルだからこそハマると抜け出せない危険な魅力に溢れている。年末年始の時間をとかさないよう、ご注意を。