今、ポテチ界に変化が起きている。これまで、主に味の面で個性を競ってきた業界に「揚げたて」「工場直送」などフレッシュさで勝負する商品が台頭してきたのだ。
〈湖池屋〉湖池屋工場直送便 ポテトチップス うすしお味
「きっかけは工場見学で揚げたてのポテトチップスを試食されたお客様からの商品化希望の声でした。あまりに数が多いので、製造翌日に発送する工場直送便を通販限定で始めました」(湖池屋/笠原剛さん)
〈カルビー〉カルビープラス ポテトチップス しおバター味
カルビーも工場見学での試食に感動した消費者のニーズに応え、各地にアンテナショップを開店。揚げたてを食べられるとあって好評だ。
〈フクハク〉ポテトチップス しお
大手メーカーとは別に、最近注目を集めているのが専門店のポテチ。フクハクは福岡市に店を構える小さな専門店で、フライや味つけなどはイモの状態に合わせて毎日調整。人の手で揚げる、まさに手作りだ。
「43年前、米軍基地に出入りしていた父が、“アメリカでこういうものが流行っているらしいが、作れないか?”と見せられたのがポテトチップスでした。見るのも食べるのも初めてですから、試行錯誤しながら作ったそうです。今の厚切りスタイルは当時のまま。手作りで作りたての味を食べてもらいたくて、今でも毎日コツコツ製造しています」(フクハク/松本英治さん)
〈菊水堂〉できたてポテトチップ
菊水堂は昭和28(1953)年創業の元・瓦せんべい店。昭和35年、「ジャガイモを薄く切って揚げる菓子がおいしい」という話を聞き、先代が試作を始めたという。
「当時、ポテトチップスの流通は問屋を通さない日配でした。今は店頭に並ぶまで時間がかかるため、どうしても風味が落ちる。なんとか揚げたての味を届けたい。それが課題でした」(菊水堂/岩井菊之さん)
湿気を防ぐため、こまめな配送システムを構築し、油の中を炎が通り抜ける特殊なフライヤーを導入。直火ならではのからっとした揚げ上がりを実現した。大量生産には向かないやり方だが、質は格段に上がった。
メーカーと専門店。両者に共通するのは、「よりおいしい状態でポテチを届けたい」という想い。一袋の中に、その情熱が詰まっているのだ。