料理とワインが響き合う、みんなの止まり木。福岡〈酒場サークル〉

福岡の酒場はやっぱり熱い。なにより店主が楽しんでいるし、居合わせる客は地元民もツーリストも、いつしかその空気に当てられて楽しくなってくる──そんな熱気が漂う酒場を求めて、大濠公園〈酒場サークル〉へ。

本記事は、BRUTUS「おいしい酒場の旅。」(2026年4月15日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

photo: Yoshiko Watanabe / text: Michiko Watanabe

薄暮。「立ち呑み」と書かれた提灯にポッと明かりが灯ると、開店時間だ。福岡は大手門のあたり。通り側はガラス張りなので店内がよく見える。次々客が吸い込まれ、カウンターに順次陣取る。キッチンも丸見え。腕達者、店主・市村大輔さんがフライパンを軽やかに操り、オムレツを作る。元気いっぱいのサービス・香内奏楽(こうちそら)さんが、スイングカランで丁寧に生ビールを注ぐ。

それゆえ、「まずはビール」の声が多い。ワインをという人には、好みに応じて、これはこんな味わい、この造り手はこんな人、とわかりやすく薦めてくれる。

そもそもは、同じエリアに2011年に創業したレストラン〈クロマニヨン〉の物販店〈サークル〉をワインバーにモデルチェンジ。さらに移転して〈酒場サークル〉にパワーアップしたのが22年のこと。アペロにもよし、食後の締めにもよし。近所の人ならサンダル履きで、ひょいと行ける気軽さも魅力だが、旅人にも心地よい空気。

「〈クロマニヨン〉とベースは同じ。でもアウトプットが違う。かつてはにじり寄るような接客(笑)だったのを、ぐっと自由にカジュアルに。スタッフ的にも、若い人がチャレンジしやすい、表現しやすい環境にしてます」と、店主。

酒場サークルのワインと料理
左/ウフマヨ2個600円。梅マヨ味。右/フムスと季節野菜のグリル750円。ワインは初夏らしく仏・ジュラのマルヌ・ブランシュを。

創業以来、すべてに誠実に取り組んできた。食材の生産者の元を丹念に訪ね、納得できるものだけを扱ってきた。メニューの一つ一つが、「生産者の温度をそのまま伝えたい」という思いが乗ったものばかりだ。ただし、いちいち説明はしない。食べればわかるはず。それはワインに対しても同じである。

黒板を見ると、あて、前菜、メイン、〆にと分かれていて、ぬか漬けにリコッタみそ、山栗のコンフィ、新しょうがと新ごぼうのグラタンなど、どこか懐かしいような、でも新味のあるしゃれた料理が並ぶ。立って飲んで食べて会話が弾む。「いい店は一朝一夕にはできない」と店主が言う通り、これまでの積み重ねあればこその奥行きと深みが、何ともいえない心地よさを醸し出す。

〈酒場サークル〉内観
メニューは壁の黒板に。ワインが飲みたくなる料理の数々と付かず離れずの接客で、はしごのはずがつい長居になってしまいそう。
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