バンドはいつまでもなくならない、帰る場所。Spangle call Lilli lineが、3年ぶりの新曲「silence」を発表

結成28年のバンド、スパングル・コール・リリ・ライン。メンバー全員が兼業ミュージシャン、初期からレコーディングにPro Toolsを導入する等、今では当たり前になっていることを、キャリアの始動時から取り入れ、マイペースに活動を続けている。「個々の活動を尊重し、全員の波長が合った時に制作が始まる」という楽曲には、一聴しただけでスパングルだとわかる個性があり、後藤正文や福岡晃子ほか、ミュージシャンにもファンが多い。愛される理由の一つは、非プロフェッショナルとも受け取れる、音楽と緩やかにつながるというスタンスにあるのかもしれない。

photo: Kiyoaki Sasahara / text: Katsumi Watanabe

藤枝憲

サポートメンバーを含め6名で制作しているけど、基本的に本業や家庭の事情を優先していて。新曲「silence」も、前作の完成後すぐに制作を始めたけど、全員のスケジュールが合わず、さらにスタジオの閉鎖やレーベルの事情も重なり、完成から発表までに時間がかかったよね。

「silence」Spangle call Lilli line
2026年2月18日に配信された新曲。エレクトロニカ風のイントロで始まり、ギターとシンセによるキャッチーなメロディが鮮烈。ミックスは吉田仁が担当。

笹原清明

自分のギターを録(と)り終えてから2年は経ったかも(笑)。でも改めて新曲を聴いてみると、どこか結成当時の曲のようなみずみずしさが感じられた。音源を聴いたスタッフからも「20代のバンドかと思った」と言われたし。僕が撮ったアーティスト写真も、音が年齢不詳だから顔がわからないものにしたらいいかもって。昔から顔が見えるカットが少ないけどね。

藤枝

バンドの音が変わらない理由の一番の要因は、やっぱりボーカルの大坪加奈さんの声質と、歌詞だと思うな。メッセージどころか、歌詞に意味がない。流れとしてはまず、僕らがベーシックトラックを作り、大坪さんがフワッとした英語の仮歌を入れる。歌詞はレコーディングまでに仕上げるけど、仮の英詞を日本語に変換する時に大坪さんが使う言葉や表記に、独特のこだわりがあって。僕はいつも歌詞カードを含めたジャケットのデザインをしていて、その校正が大変(笑)。

笹原

時々、本人も読めない字をあててくることもある。だけど、そういう部分含めボーカリストとしても天才的だと思うな。

藤枝

歌メロに変更があっても、すぐに対応できる。クラシックの奏者みたいに、レコーディングでは2回くらいしか録らない。

笹原

「silence」の録音時が、まさにそんな感じだったね。曲としても、歌詞もハッキリして聴きやすいし、僕らの代表曲「dreamer」(2010年)に近いかも。

藤枝

作った新曲の中で、笹原君は「これが一番スパングルっぽい」と言ったよね。3年ぶりの曲なら、バンドらしさをストレートに表した方がいいかもって思った。

笹原

なんか大人になったね。

藤枝

10年くらい前に笹原君が「バンドは、たまに帰る実家みたいなもの」と言っていたけど、当時僕は制作現場を緊張感のある戦場みたいなものだと思っていたから理解できなかった。でも最近、意味がわかってきた。あと2年で結成30年、特に解散する理由もないから、いつまでもなくならないものとして帰る場所であってほしい。

笹原

けど、実家って帰ると「あんた仕事大丈夫なの?」とか、小言も言われるよ。

藤枝

それも含めて、いいんだよ(笑)。

左から、ギタリストの藤枝憲、笹原清明。

Spangle call Lilli lineの2人が刺激と影響を受けたアルバム

FUJIEDA'S SELECTION

『DOKI DOKI』サニーデイ・サービス
2022年発表の14枚目。「とにかく元気な曽我部さん、最近のライブでは約4時間演奏していて。理想の先輩バンドです」
『Instant Holograms On Metal Film』Stereolab
2025年、イギリスの音響系バンドによる15年ぶりの新作。「生演奏と電子音の相変わらずなループ感が、クセになります」
『Secret Love』Dry Cleaning
2026年、名門〈4AD〉から発表されたばかりの3作目。「インディー感のある楽曲はもちろん不気味なアートワークもいい」

SASAHARA'S SELECTION

『Post』Björk
1995年発表、「Hyper‒Ballad」などの人気曲を収録した2作目。「当時の女性ボーカリストはみんなビョークに憧れてた気がする」
『OK COMPUTER』Radiohead
ロックにエレクトロニカを持ち込んだ1997年の金字塔。「どれも大学時代に憧れた作品だけど、特に思い入れがある一枚です」
『BTTB』坂本龍一
1998年、初の全曲書き下ろしピアノ作。「シンプルだけど琴線に触れる旋律。衝撃的で、ピアニストになりたいと思いました」

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