ブルータス時計ブランド学 Vol.85〈ウルベルク〉

海より深い、機械式腕時計の世界から、知っておきたい重要ブランドを1つずつ解説するこちらの連載。歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、この1年間に登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。ウォッチジャーナリスト・高木教雄が講師を担当。第85回は〈ウルベルク

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

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ワンダリングアワーに特化した、異色のメゾン

時インデックスを振り分けた3つのディスクが、それぞれ自転しながら順に現在時刻の数字を表し、同時に全体が衛星回転して分針として機能する──ワンダリングやヴァガボンド(いずれも“彷徨う”の意)アワー、あるいはサテライト(衛星)アワーなどと呼ばれる時刻表示機構は、17世紀半ばのローマで置時計用として創案された。やがて時を経て19世紀には懐中時計に転用。そして1990年代になって、腕時計にも登場した。同機構を持つ現行モデルは複数のブランドで散見できるが、かなり稀少な存在である。

〈ウルベルク〉は、そんな珍しいメカニズムに特化した異色の時計ブランドである。時計師フェリックス・バウムガルトナーとデザイナーのマーティン・フレイがタッグを組み、1997年にジュネーヴで創設。同年、丸いケースの前面を閉じ、12時位置側に設けた円弧上の開口部からワンダリングアワー機構の分針を兼ねるアワーディスクの数字を覗かせる「UR-101」と「UR-102」を発表し、時計界にセンセーショナルを巻き起こした。当時、同機構を実現していたのは、他に1社しかなかったからだ。以降、彼らはワンダリングアワーをさまざまに再解釈することで、“時を告げる芸術作品”を創出してきた。

二人の才能に目を付けた〈ハリー・ウィンストン〉は、独立時計師に自由な創作を委ねる「オーパス」シリーズに招聘。2005年に誕生した「オーパス5」では、ディスクに代わりキューブが回転するワンダリングアワー機構を実現した。さらに同機構を扇状に運針するレトログラード分針と組み合わせたり、腕時計と同期して時刻調整する原子時計を創作するなど独創性を発揮。一方で時計製作は伝統的な技術に則り、高級時計としての真の価値を有する。

【Signature:名作】UR-100V Magic T

ケースとブレスレットを統合した、〈ウルベルク〉流のラグスポ

アワーディスクが、分インデックスの0位置に至ると、下に隠れていた針が突き出て分を指し示す。そして1時間が過ぎると、分表示の役目を終えたアワーディスクの下に針は再び隠れる。2019年に誕生した「UR-100V」で、〈ウルベルク〉はワンダリングアワー機構の視認性を向上させた。これはその新装で、メゾン初のブレスレット仕様の登場である。

古典的なトノー型ケースを、直線で構成することでモダナイズ。ブレスレットの各リンクも直線構成とすることで、一層の一体感が図られている。激戦区であるラジュアリースポーツウォッチ市場に、強いオリジナリティで参戦を果たした。

縦49.7×横41mm、自動巻き、チタンケース。価格要問い合わせ。

【New:新作】UR-101 T-Rex

大胆な彫り装飾で覆い、恐竜の頭部をケースで模す

メゾンの初作「UR-101」を大胆にアレンジ。円弧状の開口部を持つ前面を含めケース全体に施された深い彫り装飾は、巨大な爬虫類の鱗を彷彿とさせる。フォルムも頭部のようで“T-Rex”、すなわちティラノサウルスというモデル名は、まさに言い得て妙。

しかし形状は、映画『スター・ウォーズ』に登場する宇宙船「ミレニアム・ファルコン」がモチーフだとか。ケースは、酸化処理した上から手作業でブラッシュ仕上げしたブロンズ製で、経年変化が楽しめる。数字とインデックスに用いたイエローの指し色が、絶妙である。

径41mm、自動巻き、ブロンズケース。価格要問い合わせ。

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