インテリアのプロが愛用する椅子。〈SNORK MODERN AND CONTEMPORARY〉店主・小山泰之の一脚

日々あまたの優れたプロダクトと接する、バイヤーは自分のための一脚をどんな視点で選んでいるのだろう。〈SNORK MODERN AND CONTEMPORARY〉店主・小山泰之さんに、日常的に愛用する椅子とその魅力について聞いた。

本記事は、BRUTUS「椅子と、居場所。」(2026年2月2日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

photo: Jun Nakagawa / text & edit: Emi Fukushima

アームがもたらす小さな違和感に、デザイナーの創造性が滲(にじ)み出る

椅子を選ぶ時に重視するのは、その一脚からどれだけデザイナーの創造性を感じられるか。販売するもののみならず、自分が日々使うためのものであっても、その視点は変わりません。仕事場に置いて、一休みしたり、考え事をしたりする際に腰を下ろすこのイージーチェアも、その視点で深掘りした結果、一気にその魅力にハマったもの。

クロームメッキのフレームに黒のレザーシート、そこにカラフルで独特な形状のアームが付いている。素材、形態、色といった各要素が全体のバランスで見ると小さな違和感をもたらしていて、その不思議な佇まいが気に入り数年前から私物として愛用しています。

デザインされたのは1982年。手がけたのはフィンランド人デザイナーのウリヨ・クッカプーロです。彼は60年代に《カルセリチェア》という名作を生み出し、ヘルシンキ芸術デザイン大学の学長まで務めた人物。長年、教育者とデザイナーを両立しキャリアを重ねてきましたが、創作への意欲が高まり、80年からは再びデザイナーに専念。セカンドキャリアの第1弾として発表されたのがこの椅子なんです。“エクスペリメント=実験的な”と名づけられたことからも、一歩先のアプローチとして意欲的な試みの中で誕生したチェアだったことが窺えます。

80年代のヨーロッパ各地においてほぼ同時発生的に盛り上がっていたポストモダンの動きの中でアート寄りのアプローチに振ったイタリアのメンフィスらとは異なり、あくまでモダニズムの合理性や機能性を継承しつつ表現を拡張している。そういった点では北欧的とも捉えています。

この椅子はまさにその筆頭で、人間工学に基づき構築されているがゆえに座り心地がいいんです。表現としての創造的な部分を押し出しながら、機能面もしっかり併せ持っており、適度にコンパクトで日本の住宅に馴染むのも特筆すべき点です。機能性と装飾性が絶妙なバランスで同居する稀有な一脚で、僕自身の今の気分にもフィットしています。

No.1047「椅子と、居場所。」ポップアップバナー
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