音楽の気配をライブ空間に宿す、相棒。ミュージシャン・ハナレグミと椅子

インスピレーションの源となったり、長時間の作業を支えたり。豊かな表現が生まれる現場には、必ずクリエイターが信頼を寄せる椅子がある。ハナレグミのスタジオを訪ね、日々腰をかける一脚について話を聞いた。

本記事は、BRUTUS「椅子と、居場所。」(2026年2月2日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

photo: Satoko Imazu / text: Miho Matsuda / edit: Emi Fukushima

音楽の気配をライブ空間に宿す、相棒として

アコースティックギターを爪弾くと、柔らかく澄んだ音が広がる。15年前、地下の小さな空間をリノベーションしたハナレグミ・永積崇さんのプライベートスタジオは、何時間でも音楽に向き合えるように居心地よく整えられている。

「スタジオも楽器の一つ」という彼の言葉通り、炭を埋め込んだ漆喰の壁や、温かみのある木の吸音材が、心地のいい音を響かせる。そこには古い楽器や機材が置かれ、個性的な椅子も10脚ほどあった。「レコーディングの時に使ったり、ライブの時にここから一脚持っていったり。無機質なライブハウスに思い入れのあるものが一つあると、風景が立ち上がる気がして」

中でも、デザイナーの福山武志さん率いる〈ベンダワオ!〉がドラムスローンをカスタマイズした椅子は、2015年の弾き語りツアー『弾きが旅ばっ旅』の相棒。「20ヵ所以上をともに回りました。今もこのスタジオやライブで活躍しています」。

ドラムスローンをカスタマイズした椅子
使い込まれた座面は、永積さんの相棒として音楽の旅をともにした10年を物語る。

アコースティックギターは片足を上げてギターを支えるが、足置きの部分に木彫りの“バナナの皮”が添えられている。

「足が滑っちゃうよ!という思わずクスッとするユーモアがいいですよね。椅子は誰も座っていなくても、人の気配を宿すもの。ライブの終演後、誰もいないステージに残る椅子の佇まいが、音楽を読み解く手がかりになれば。そんな思いも込めています」

ハナレグミ
都内のプライベートスタジオにて。椅子以外にもお気に入りのラグや〈スペシャルズ〉の写真など、こだわりのものが随所に。

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